8、彼氏(仮)になってくれませんか?

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「じゃあ、どうすればいいの? 告白されたわけでもないのに、あなたと付き合う気はないですって伝えるのはさすがに自意識過剰過ぎない?」 「彼氏がいるっていうとか」 「彼氏いないもん」 「そんなの、いなくてもいるって言っとけばいいんですよ」  なるほど。慧から提示された打開策は、確かに一番穏便に収まるのかもしれない。  藤田くんがどういうつもりなのか分からないけど、彼氏がいるって分かればさすがに引くだろうし。 「でも、つい最近いないって言っちゃったばっかりだしなぁ。いきなり彼氏出来たって言って、信じてくれるかな?」  うーんと悩んでいると、慧も何かを考えているみたいだったけど、しばらくして視線をあげた慧と目が合う。 「リアリティがあればいいわけですよね」 「ん? うん」 「それなら、俺が彼氏のフリしますよ」 「え?」  冗談かと思ったけど、慧の顔を見てみると冗談っていう雰囲気でもなさそう。  本気なのかな?  慧はバイト先の飲み会の時も迎えに来てくれて、それを藤田くんも見ている。それから色々あって付き合うことになったって言っても、確かに不自然じゃないかも。  でも、それって私にとってはメリットあるけど、私の彼氏のフリなんてしても慧には何のメリットもないよね。  藤田くんとは大学も違うから真実がバレることもそうそうないはず。もし万が一後で付き合ってないことがバレても、もう別れたって言えばいいわけだし、そんなに重く考えなくてもいいのかもしれないけど。でもなぁ、乗っかっちゃっていいのかなぁ。
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