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「花音先輩?」
色々考え込んでいると、慧から声をかけられたので顔を上げる。
「うん、あのね、すごくありがたいんだけど、さすがに申し訳ないなって」
「何が?」
「だって、慧に色々してもらってるのに、私は何も返せてない」
ただでさえ迷惑かけてるんだから、少しでも何かしてあげればと思って誕生日プレゼントも用意したのに。何回もおごれるほどお金に余裕があるわけでもないし。慧に助けてもらうことが多すぎて、これじゃいつまでたっても返しきれない。
「ああ、それなら気にしないでください。
花音先輩のことが好きだから色々してあげたいと思ってるだけなんで。俺は、花音先輩が好きなんです」
「……不意打ち」
付き合おうとは言われたけど、好きとか愛してるとかそういう決定的な言葉を言われてないことだけが救いだったのに。うっかりすると聞き流してしまいそうなくらいにさらっと言われたので、冗談にして返す余裕もなかった。
「雰囲気作って言っても、はぐらかされるだけじゃないですか。だったらもう話の流れで言ってやろうと思って」
「なにそれ、ずるい」
「ずるいのはどっちですか」
私の顔も見ずにケーキにフォークを刺した慧の横顔はいつも通りにも見えるけど、でもどことなく怒ってるようにも見えて、ちょっと焦ってしまう。
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