8、彼氏(仮)になってくれませんか?

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 慧にはっきりと告白された2日後の金曜日。  この日はサークルも何もなかったから一日中バイトに入っていて、夜の22時にようやく上がることが出来た。 「花音ちゃん」  従業員用の出入り口から出た途端藤田くんから声をかけられ、この前の一件があったのでなんとなく身をすくませてしまう。  なんか最近よくシフト被るし部署も違うのに帰りもよく一緒になるなぁって思ってたけど、もしかして私のこと待ってる? ……さすがに考えすぎかな。 「これから飲みに行かない?」 「あ〜……と、今日は彼氏が迎えに来るから無理かも」 「彼氏?」 「う、うん。最近付き合い始めたんだ」  わざとらしく棒読みでいったからか、疑いの目で見られてしまい、苦笑いを浮かべる。  早く来て、慧。  これ以上突っ込まれたらかわせる自信がない。 「花音、遅くなってごめん」  藤田くんに一歩ずつ距離を詰められ、じりじりと後退りをしていたところで後ろから声をかけられる。振り向くと、そこには私のあげたピアスをつけた慧が立っていた。 「慧」  打ち合わせ通りに慧の腕にぎゅっと抱きつき、藤田くんに笑顔を見せる。 「この人が私の彼氏の慧。藤田くんも会ったことあるよね? 慧、こちらが藤田くん。バイト先の友達」 「どうも」  慧が藤田くんに挨拶すると、藤田くんはあからさまに顔を強張らせた。 「よかったら、またみんなでメシでもいきましょう」 「……そうですね」  慧が心にもないことを言うと、藤田くんも一応そう返してくれたけど、たぶんこのメンバーでご飯いくことないよね。 「機会があったら、ぜひ。花音、そろそろいこ」 「う、うんっ。じゃあまたね藤田くん」  慧に腕を引かれながら藤田くんにバイバイしてから、そのまま慧についていく。
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