177人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれで大丈夫だったのかな」
スーパーからだいぶ離れ、さすがにもう大丈夫だろうと手を離しかけたけど、その手をぎゅっと握られたので、ひとまずそのままにしておくことにする。
「さあ。でもあの人、花音先輩に気がありそうな感じでしたね」
「そうかな?」
「はい。これ以上何かしてくることもないと思いますけど、しばらくは様子みるしかないですね」
「そうだよね」
「また何かあったらいつでも言ってください」
「うん。あのさ、慧って頼りになる後輩だよね」
「頼りになる後輩、ですか」
褒め言葉のつもりだったんだけど、慧は不服そうにその言葉を繰り返す。後輩っていうのは良くなかったかな。でも実際慧は私の後輩なわけで。
「あ〜あとさ、演技上手かったね」
「演技っていうか、花音先輩が本当に俺の彼女になればいいなって思ってますから」
ダメだ。どんな話しても流そうとしても、全部そういう方向に持ってかれちゃう。
「この後はどうする? 今日のお礼にラーメンおごるけど」
「行きます」
「いこいこっ。その後でえっちしてもいいよ?」
「それはいらないです」
「本当はしたいくせに〜」
「いくら夜っていっても、道でする話じゃないですよね」
照れてるのかなんなのか分からないけど、私の手を振り払った慧をからかうようにつつくと、慧は嫌そうに顔を背ける。
よし、とりあえずさっきまでの妙な空気は無くなったかな。はぐらかそうとしても流れを戻されるけど、自分から攻め込んでった方が逆にムードぶち壊せるのかも。
最初のコメントを投稿しよう!