8、彼氏(仮)になってくれませんか?

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「あれで大丈夫だったのかな」  スーパーからだいぶ離れ、さすがにもう大丈夫だろうと手を離しかけたけど、その手をぎゅっと握られたので、ひとまずそのままにしておくことにする。 「さあ。でもあの人、花音先輩に気がありそうな感じでしたね」 「そうかな?」 「はい。これ以上何かしてくることもないと思いますけど、しばらくは様子みるしかないですね」 「そうだよね」 「また何かあったらいつでも言ってください」 「うん。あのさ、慧って頼りになる後輩だよね」 「頼りになる後輩、ですか」  褒め言葉のつもりだったんだけど、慧は不服そうにその言葉を繰り返す。後輩っていうのは良くなかったかな。でも実際慧は私の後輩なわけで。 「あ〜あとさ、演技上手かったね」 「演技っていうか、花音先輩が本当に俺の彼女になればいいなって思ってますから」  ダメだ。どんな話しても流そうとしても、全部そういう方向に持ってかれちゃう。 「この後はどうする? 今日のお礼にラーメンおごるけど」 「行きます」 「いこいこっ。その後でえっちしてもいいよ?」 「それはいらないです」 「本当はしたいくせに〜」 「いくら夜っていっても、道でする話じゃないですよね」  照れてるのかなんなのか分からないけど、私の手を振り払った慧をからかうようにつつくと、慧は嫌そうに顔を背ける。  よし、とりあえずさっきまでの妙な空気は無くなったかな。はぐらかそうとしても流れを戻されるけど、自分から攻め込んでった方が逆にムードぶち壊せるのかも。
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