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「待って、慧」
「なに」
どうにかしないと。そう思って慧の腕を掴んだけど、振り向いた慧の目があまりに冷たくて早速心が折れそう。
「この前はごめんね」
「それはもう聞きました」
「やっぱり怒ってる、よね」
「……」
恐る恐る聞いてみるけど、慧はじっと私の目を見つめたまま何も言ってくれない。何か言って、慧。無言が一番気まずい。
「謝って済むことじゃないし、こんなこと言えた義理じゃないんだけど、仲直りしたい。慧と気まずくなりたくないよ」
「仲直りですか」
「うん、ダメかな?」
少しだけ態度を軟化させた慧との距離を詰めると、慧は一歩引いたけど、それでもまだ話を聞いてくれる気はあるみたいだ。
「いや、まあ……ダメ、ではないですけど。
俺もいきなり帰ったりしてすみませんでした」
気まずそうな顔でペコリと頭を下げられ、ブンブンと首を横に振る。
「ううん、私が悪いから」
「……」
「考えたんだけどね、女の子は処女かそうじゃないかって身体で分かっちゃうけど、男の子はそうじゃないでしょ?」
「は?」
「だからね、昨日のことは忘れて、ノーカンってことにするのはどう? 慧に次の彼女が出来て、その子とする時が慧の初めてってことで」
うん、これ完璧じゃない?
この前から考えていたことを一気に話すと、この前と同じく慧の表情が無くなっていく。
あれ? もしかして、またやらかした?
「どこまで俺を怒らせたら気がすむんですか」
「えっと、慧、あのね、」
「もういいです、分かりました。忘れます。花音先輩も忘れてください」
どうにか取り繕おうとしたけれど、慧は早足で階段を上がっていってしまった。
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