1、後輩の童貞を奪ってしまいました

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「待って、慧」 「なに」  どうにかしないと。そう思って慧の腕を掴んだけど、振り向いた慧の目があまりに冷たくて早速心が折れそう。 「この前はごめんね」 「それはもう聞きました」 「やっぱり怒ってる、よね」 「……」  恐る恐る聞いてみるけど、慧はじっと私の目を見つめたまま何も言ってくれない。何か言って、慧。無言が一番気まずい。 「謝って済むことじゃないし、こんなこと言えた義理じゃないんだけど、仲直りしたい。慧と気まずくなりたくないよ」 「仲直りですか」 「うん、ダメかな?」  少しだけ態度を軟化させた慧との距離を詰めると、慧は一歩引いたけど、それでもまだ話を聞いてくれる気はあるみたいだ。 「いや、まあ……ダメ、ではないですけど。 俺もいきなり帰ったりしてすみませんでした」  気まずそうな顔でペコリと頭を下げられ、ブンブンと首を横に振る。 「ううん、私が悪いから」 「……」 「考えたんだけどね、女の子は処女かそうじゃないかって身体で分かっちゃうけど、男の子はそうじゃないでしょ?」 「は?」 「だからね、昨日のことは忘れて、ノーカンってことにするのはどう? 慧に次の彼女が出来て、その子とする時が慧の初めてってことで」  うん、これ完璧じゃない?  この前から考えていたことを一気に話すと、この前と同じく慧の表情が無くなっていく。  あれ? もしかして、またやらかした? 「どこまで俺を怒らせたら気がすむんですか」 「えっと、慧、あのね、」 「もういいです、分かりました。忘れます。花音先輩も忘れてください」  どうにか取り繕おうとしたけれど、慧は早足で階段を上がっていってしまった。
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