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「そういえば慧、車の免許とったんだって。聞いた?」
私が慧たちを見ていることに気がついたのか、一花から声をかけられて振り向く。
「今一花から聞いた」
「連絡とってないの?」
一花にはちょっと驚いたような顔をされちゃったけど、あれから一回もメールも電話もしてない。今日だってまだ話してないし。
当たり前だけど、この前のアレでさすがに愛想をつかされたんだと思う。
「とってないよ。付き合ってるわけでもないんだから、わざわざ連絡とる必要もないかなって」
今まではなんだかんだ毎日のように連絡とってたし、ずっと一緒にいたから、やっぱり寂しい。でも、きっとこれで良かったんだと思う。
私は慧を怒らせてばかりだし、慧が望んでくれているような関係にはなれそうもない。
みくちゃんみたいな———みくちゃんじゃなくても私以外の真面目な女の子と付き合った方がずっと健全だよ。
うん、これで良かったんだ。私にとっても慧にとってもこれが最善。そう、だよね。
でも、なんだろう。これでいいはずなのに、なんかモヤモヤする……。
「何かあったの?」
極力いつも通りに振る舞ったつもりだけど、親友の一花の目にはそうは映らなかったみたい。
じっと私を見つめる一花の視線から逃れるように辺りを見回す。誰も聞いてないかもしれないけど、ここで話すのはちょっとなぁ。
「ん〜……。今日どうする? 泊まりにくる?」
「行っていいなら」
「部屋の片付けしてないけどいい?」
「それはいつものことでしょ」
「さすが一花。じゃあ、その時に話す」
「ん、分かった」
その話題はそこで終わり、その後は離れていた間のことを話したりしてバーベキューに参加したけど、心はどこか上の空で。せっかくのバーベキューなのにイマイチ楽しめなかった。
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