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「私、松尾先輩のこと大好きだった。のんもそうだよね。恩田先輩のこと大好きだったよね」
ひとしきり笑いが落ち着いた後に言われた一花の言葉に、ただ無言で頷く。
「私たち忘れられないくらいに好きな人が出来て、大恋愛したけど、でもさ、もう終わったんだよ。いい加減認めようよ」
静かに言われたその一言にドキリとして、思わず息をのんでしまう。
「私も前に進めるようにがんばってみるつもり。だから、のんも前に進も? 一緒に前に進もうよ」
「う、ん。そっか、そうだよね。もう終わったんだよね。とっくに———終わってたんだよね」
自分では笑顔を作ったつもりだけど、たぶん全然上手に笑えてないと思う。
一花からはっきり言われて、自分でもそれを口にしたら、なんだか色々なものが込み上げてきた。涙が勝手にボロボロと溢れ出す。
あの日に恩田先輩とは終わったことは分かってたけど、でも認めたくなかった。幸せだった頃に戻りたいってずっと思ってた。
でも、もう無理なんだよね。
どれだけ願っても、あの日には戻れないんだよね。
とっくに分かってたことだけど、改めてそれを自覚したら、今まで抑え込んできたものが溢れ出して涙が止まらなくなった。
「〜〜〜もうっ。泣かないでよ。私まで泣けてくる」
膝に顔を埋めて泣いていた顔をあげると、私以上に一花が泣いていることに気づく。
泣きすぎてマスカラとアイラインが落ちちゃって、目の周りがすごいことになっている。
「……ひどい顔」
「そっちもね」
思わずそうこぼすと一花からも言い返されたけど、なんとなくおかしくなって、二人して声を上げて笑ってしまう。
ひとしきり笑い合ったあと、大きく息を吸い込んでから一花と目を合わせる。
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