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10、もう一度チャンスをください
バーベキューが終わった後のサークルの日、今日は絶対に慧に謝って告白しようと意気込んで大学に行く。サークル棟の階段を登っていると、正面から降りてくる慧を見つけた。
グレーのTシャツに黒いギターケースを背負っている慧。深い意味はないのかもしれないけど、私がプレゼントしたピアスをまだ使ってくれていることがちょっと嬉しくなる。
一回部室寄ったけど、コンビニに何か買いに行くとこなのかな。て、そんなことはどうでもいいんだった。とにかく謝らないと!
「慧、おはよ」
「……おはようございます」
とりあえず声をかけると、慧は視線を逸らして私の横を通り過ぎようとする。
やっぱりこうなっちゃうよね。
でも、ちゃんと謝って告白するって決めたもん。
「あ、待って!」
「は?」
通り過ぎようとした慧の腕をガシッと掴むと、とんでもなく冷たい目で見られたので、とりあえず手を離して距離をとった。
「今少しいい? 話したいことがあるの」
「今ですか? まあいいですけど」
嫌そうにしながらも一応話を聞いてくれる気はあるみたいなので、そのまま階段で話をすることにする。
「この前はごめんね」
「別に謝ってもらわなくてもいいですよ」
「でも慧怒ってたじゃん」
「そうかもしれないですね」
「あのね、使いかけだったゴム捨てたんだ。新しいの買ってきた」
まだ封を開けていない新品のゴムをカバンから取り出すと、それを見た慧はぎょっとして、即座にそれを私のカバンの中に突っ込んで戻した。
「ちょ……っ。こんなとこでそんなもの出さないでくださいよ。誰かに見られたらどうするんですか。ここ大学ですよ」
「ごめん」
「なんなんですかもう……。ていうか、俺関係ないんですよね?」
天を仰ぎ、ため息をつく慧に一歩近づき、深呼吸してから口を開く。
「関係、なくないよ。私も慧のことが好き」
「それはどういう意味で?」
「その、そういう感じで」
「そういう感じというのは」
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