10、もう一度チャンスをください

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「行きます?」  練習が終わった後一花と少しだけ話してから部室を出ると、廊下のところで慧が待っていてくれた。  う〜……なんかこういう付き合ってるぽいのすっごく久しぶりっていうか、思い出せないくらい前に感じて、どんなノリでいけばいいのか分からない。 「う、うん。どこ行く?」 「どこでも。とりあえず昼メシですよね」 「大学の近くのファミレスは?」 「いいですけど、そんなとこでいいんですか?」  伺うような目で見られる意味が分からなかったけど、ひとまず頷いておく。そんなとこって、何気に失礼じゃない?  そんなことを思いながらもファミレスに行くことになったんだけど、店の前で慧はこちらを振り返る。 「本当にここでいいんですか? 初デートだし、もう少し雰囲気の良いとこでも」  なるほど……、そういうことね。  だから、ファミレスって言ったら微妙な反応だったんだ。そういうの、何も考えてなかった。 「といっても、今日付き合うことになるとは全く思ってなかったので、俺もどこに行くか思いつかないんですけど。気が利かなくてすみません」 「え、そんな、私の方こそいきなり告白しちゃってごめんね。とりあえず告白しようって思って勢いでしちゃったから、そのあとのこととか何も考えてなかった」 「いや、それは嬉しかったです。嬉しすぎて、今俺おかしくなってます」 「そ、そっか。全然そんな風に見えないけど、そうなんだね」  真顔でおかしくなってるって言われても本当かなあって思っちゃうんだけど、そんな嘘ついても仕方ないし、慧がそう言うんだから、たぶん本当なんだよね。  店の前でそんな押し問答をしていたら、いつのまにか周りの人から注目を集めちゃってることに気がつく。 「店の前まで来ちゃったし、とりあえず入る?」 「そうですね。雰囲気の良い店に行くのはまた今度で」  また今度……。普通の会話なのかもしれないけど、やっぱり付き合ってるって感じだよね。 なんかこういう風に彼女扱いされるのはガラじゃないっていうか、むず痒い感じ。嫌な感じはしないけど、なんかこうムズムズするっていうか。  一人で微妙な気分になってたら慧がドアを開けてくれたので、そのままファミレスの中に入ることにした。
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