10、もう一度チャンスをください

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「意識してくれてるのは嬉しいんですが、じゃあこれからずっとキスもセックスも出来ないんですか?」  目が合った慧は怒ってはいなさそうだったけど、困ったような顔をしていて、なんだか申し訳ない気持ちになった。 「そんなことないよ。私もしたいし。 でも、もうちょっと待って。あ、そうだ。私からさせて。私のタイミングで一回しちゃえば、たぶん大丈夫だと思うから」 「……分かりました」  慧は私の腕から手を離し、目を閉じる。  ……。こういうのは、一回しちゃえば平気になるはず。  何もキスするのが初めてなわけじゃないし、何回もしたことあるんだから。今さら恥ずかしがる必要なんてない。そうだよ。……よし。  覚悟を決めて慧に顔を寄せ、唇を重ねようとしたけれど、やっぱり出来なくて身体を離す。  慧からしてもらった方が良かったかも?  自分から言い出しといて何だけど、なんかこういう「さあどうぞ」ってお膳立てされた状況でキスする方が逆に恥ずかしい気がする。 「まだですか?」  そんなことをごちゃごちゃ考えていると、うっすらと目を開けた慧と目が合った。 「い、いま出来そうだったのに。もうちょっと待っててってば。慧が目開けたから、またやり直しだよ」 「やり直しって……。いつまで待てばいいんですか」  文句を言いながらも、慧は再び目を瞑ってくれた。  うん、さすがにいっとこう。  タイミング逃すと永遠に出来ない気がするし、下手したらこのまま夜が明けそう。  そう思って顔を近づけるんだけど、やっぱり出来なくて、顔を引っ込めては近づけての繰り返し。
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