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「意識してくれてるのは嬉しいんですが、じゃあこれからずっとキスもセックスも出来ないんですか?」
目が合った慧は怒ってはいなさそうだったけど、困ったような顔をしていて、なんだか申し訳ない気持ちになった。
「そんなことないよ。私もしたいし。
でも、もうちょっと待って。あ、そうだ。私からさせて。私のタイミングで一回しちゃえば、たぶん大丈夫だと思うから」
「……分かりました」
慧は私の腕から手を離し、目を閉じる。
……。こういうのは、一回しちゃえば平気になるはず。
何もキスするのが初めてなわけじゃないし、何回もしたことあるんだから。今さら恥ずかしがる必要なんてない。そうだよ。……よし。
覚悟を決めて慧に顔を寄せ、唇を重ねようとしたけれど、やっぱり出来なくて身体を離す。
慧からしてもらった方が良かったかも?
自分から言い出しといて何だけど、なんかこういう「さあどうぞ」ってお膳立てされた状況でキスする方が逆に恥ずかしい気がする。
「まだですか?」
そんなことをごちゃごちゃ考えていると、うっすらと目を開けた慧と目が合った。
「い、いま出来そうだったのに。もうちょっと待っててってば。慧が目開けたから、またやり直しだよ」
「やり直しって……。いつまで待てばいいんですか」
文句を言いながらも、慧は再び目を瞑ってくれた。
うん、さすがにいっとこう。
タイミング逃すと永遠に出来ない気がするし、下手したらこのまま夜が明けそう。
そう思って顔を近づけるんだけど、やっぱり出来なくて、顔を引っ込めては近づけての繰り返し。
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