Sippin' on Rapsody

Lesson 1. prologue

「せやから、何遍(なんべん)言うたら分かんねん？ その頭は飾りか⁉︎ 」

　コーヒーの香りがふわふわと漂う。
　シロップに濡れたいちごをぎっしりと載せたストロベリータルトはキラキラと私を見つめている。

　緩やかな雰囲気で満ち溢れた週末のカフェ。
　開放的な店内には、昼下がりの陽の光が降り注ぎ、のんびりとした時間が流れていた。

　目の前では煌めくブロンドの髪から深く澄んだアイスランドブルーの瞳が覗く素敵な彼が、うっとりするような苦笑いを浮かべている。

　そして彼は、とても流暢な関西弁で私に怒声を浴びせかけていた。

「だから、英語は中学の時に見切りつけたって言ったでしょ？ 」

「こんな簡単な文章も分からんのか？ そんなんやったら、スコア800超えなんて無理やで 」

「出題されそうなフレーズだけポンポンって教えてくれればいいじゃない。どうせマークシートなんだから。文法からやってる時間なんてないって言ったよね？ 」

「アホか！ こんな簡単な文法も分からんのに、フレーズだけ覚えて本番なんかできるか！ 」

　そう一息に言い切ると、ヒースは前髪をかきあげながら大きなため息をついた。