lesson 9. chase the last chance

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 このままずっと終わりがないんじゃないかって錯覚してしまうくらい長かったエレベーターを抜けると、目の前にだだっ広い空間が広がった。  出発ロビーはクリスマス直前のせいか、それとも週末のせいなのかは分からないけれどガヤガヤとたくさんの人でごった返していた。  ここで働いている人。  今からどこかへ旅立って行く人。  私みたいに旅立つ人を見送りに来た人。  それぞれの抱える思いが忙しなく行き交っている。  すぐ目の前では縦長のカウンターが何列も向こうの方まで等間隔に並び、どのカウンターの前もスーツケースを手にした旅行客が長い列を作っていた。  纏わり付いてくる焦りをなだめながら周囲を見回すと、斜め正面の天井近くに巨大な黒い電光掲示板が見えた。  思い思いの方向に進もうとする人の流れをかき分けながら、私はなんとか電光掲示板の近くまで駆け寄った。  そして、掲示板を見上げて目を凝らした。  視線を一番上からゆっくりと下げて行く。  三分の一くらいまで下りてきたところで、18:35 の文字にぶつかった。そのまま右に視線をずらすと、行き先はソウルとなっていた。  掲示板の真下、【出発】と表示された案内板の下に人の流れが吸い込まれて行く。  私はその中にお月様の色を探した。 「もう、間に合わねぇよ 」  どこか投げやりな声に肩を叩かれた。  振り向いた先に、今までどこにいたのか、こちらにゆっくりと歩いてくる真島さんの姿があった。 「あれ、見てみろ。今、LAST CALL(最終搭乗案内中) に変わった 」  真島さんは電光掲示板の下に立ち尽くす私の隣まで来ると、上の方に向けて人差し指を伸ばした。 「真島さん、ヒ、ヒースは……? 」  私は真島さんを見上げた。  もしかして、彼ならまだ何か私を救う術を隠し持っているんじゃないかって期待した。 「今頃は飛行機の中で寝てるんじゃないのか。だから言っただろ? 敵は手強いって 」  私の儚い期待は、真島さんの冷ややかで自嘲気味の声にあっけなく砕かれた。
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