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Lesson 2. my teacher is Kansai British
「香里、残念やけど時間切れや 」
ヒースは腕時計を見ながらそう言い放つと、そそくさとテーブルの上に開いていたテキストをしまい始めた。
「とりあえず今日答えられんかった分はやっといてな。それから、レッスン12までは分からんでも読んどけ 」
「ち、ちょっと待って。レッスン12って今日やったとこから5レッスン分もあるんだけど 」
「とろいお前が悪い。急がんと間に合わへんで。ほな、またな 」
ヒースはそう言って、私の反論も半ばに何かに追われるようにカフェを出て行ってしまった。
時間が来た途端にいきなりレッスンをスパッと断ち切られるのはいつものこと。ヒースが慌てて帰って行くのもいつものことだ。
彼の愛しの麻友ちゃんとの時間を邪魔しているのは、紛れもなく貴重な週末の二時間を貰っている私だ。
真島さんの頼みだからって言っても、律儀に付き合ってくれているヒースには感謝しなければならない。
穏やかな週末の昼下がりに、ひとり取り残された時に残る空虚感には未だに慣れない。
なんだか胸にぽっかりと穴が開いてしまったかのように、そこからザラザラと乾いた感触が漂ってきていた。
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