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know の過去形がなんで knowed じゃないのか。
take の過去形だって taked でいいじゃない。
なんでもっと構造が単純じゃないの?
little と few だって少ないってことならどちらかひとつにして欲しい。many と much だってそうだ。
魚は何匹増えてもfishだし、child は人数が増えると顔が変わる。
「まだそんなこと勉強してて間に合うの? 」
向かいの席に座った同僚の千夏が唐揚げを頬張りながらこちらを覗き込んでくる。
混み合っている社食で、テキストを隣の席まで広げている私は結構顰蹙ものだろう。
昼休みは貴重な勉強時間なのだ。
家に帰ってテキストを開いても疲れてすぐにだらけてしまう。
それでも一週間で課される宿題は雪だるま式に増えてきていた。
「分かんないなら聞いてくればいいじゃん。"先生" 、すぐそこにいるんだから 」
千夏が指差した先には、エセ関西人の姿があった。彼は愛しの麻友ちゃんと楽しそうにランチを啄ばんでいる。
愛しの麻友ちゃん、もとい総務課の青木 麻友ちゃんはセミロングのサラサラな黒髪に、顔はどちらかと言えばすっきり系の美女だ。
そんな和風美人の麻友ちゃんと典型的な外国人の姿をした金髪碧眼のヒースは、一見するとちぐはぐに見えてどことなくお似合いに見えるから不思議だった。
「なるべく会社では近寄りたくないの 」
きっと麻友ちゃんはいい顔しないだろうし、ヒースだって会社でまで私の面倒は見たくないはずだ。
とりあえずハンバーグを一切れとご飯を一口頬張って次の問題へ向かう。
boring と bored ?
つまらないって意味だよね。
つまらないって "今" 思ってるから、〜ing かな?
「まぁ、それでも通じるこた通じるけどな 」
その声に振り向くと、いつからそこにいたのか、ヒースが後ろからテキストを覗き込んでいた。
「正解は bored の方や。boring やと、自分はおもろない奴やって意味になるからな。いつか自己紹介にでも使たったらええわ 」
そう言ってヒースはケラケラと笑いだした。それに合わせてヒースの隣にいた麻友ちゃんがクスッと笑った。
私は自分が入れるような穴を必死で探した。
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