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椿と蕾は、外で一緒に遊んでいた。鞠をつく遊びだ。
「お姉たん、鞠お上手だね」
「うふふ、そう?蕾もお上手よ」
椿の漆黒のおかっぱ髪が、風で揺れた。小豆色の着物の裾も揺れた。
蕾のお団子頭を、椿はそっと撫でる。
蕾はまだ5歳だ。椿は15歳なので、椿が10歳の時に生まれた。母親が亡くなったのも、椿が10歳の頃だ。
父親も、侍に誤って切られて、殺された。確か、椿が11歳の頃か。今は、椿と蕾、そしておばあちゃんと一緒に暮らしている。
「蕾は可愛いわね。お母さんそっくりよ」
「お母たんに?」
「うん」
椿は微笑んだ。
椿は母親の忘れ形見とも言える蕾を、大層大事にし、可愛がっていた。蕾も、そんな姉の椿を慕っていた。
「椿、蕾、お昼ご飯ができたよ」
少し掠れた声で、おばあちゃんが家の戸を開けて顔を出し、言った。
「はーい、じゃ、お昼食べましょう。蕾、お腹空いたわね」
「うん」
二人は家に戻っていった。
おばあちゃんは、優しくて椿は好きだった。おばあちゃんは美影の母親で、美影が死んだ時、
「こんなに可愛い自分の子供を残して死ぬなんて…美影は酷い親だよ」
そんなことを漏らしていた。
おばあちゃんは両親のいない二人を、大事に育てていた。幼くして両親を亡くした二人に、同情していたのだ。
明日は母親の五回忌だ。椿と蕾は母親のお墓参りに行く予定だ。
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