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彼は、一言で言えば最低な奴だ。
まず、記念日は覚えてない。
私の誕生日だっていつも後になって思い出すくらいだ。
トモダチと遊ぶのが大好きで、私との約束は後回し。
一緒に行こうって言っていた映画を女友達と先に観に行かれたことがある。
そんな相手とよく長い間付き合えたなって自分でも思う。
仲の良い友達にも、あんな奴早く別れたらって何度も言われた。
けれど、なんだか憎めなくて。
求められると突き放せなくて。
だからついうっかり同棲して、ついつい籍まで入れてしまった。
ちょろい女だって分かってる。
でも私は彼が好きだったから、そうした。
それは彼も同じだったと信じている。
けれど、時々思い返しては、やっぱり不安に思ってしまうんだ。
本当にそうだったのかって。
「ねぇ、ちょっと痩せた?」
止んだシャワーの音と入れ替わるように尋ねられる。
振り返ると彼は浴槽の縁に肘を乗せて、私の身体をジロジロと眺めていた。
私は立ち上がり、どこも隠すことなく彼のいる浴槽へと足を入れる。
彼とは何度も抱き合ったし、お風呂にだって一緒に何度も入っている。
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