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みゆの決意
「ノエルったら、アデラールのこと、ペットだなんて、失礼しちゃう!前の女王様の時だって、ずっとガラちゃんを女王様専用のペットだと思ってたんだよ!もう、なんか腹立つよ!」
お城につくまでずっと黙っていたガラちゃんは、みゆの前を歩く侍女には聞こえないような小声で、プリプリ怒っていた。
「ガラちゃんは怒りんぼうね」
「だって、みゆ!ノエルは、とても優秀だけど今でも、前の女王様を尊敬しているんだよ!賢くて強いからって!きっと、みゆにも前の女王様みたいになってほしいんだよ」
「私はなりたくないよ。ガラちゃんやアデラールをいじめていたひどい女王になんて、絶対なりたくないよ」
「うん、みゆは今のままがいいよ!勇敢で優しい最高の女王様だもん」
ガラちゃんにほめられて、みゆがエヘヘと、照れ笑いをしていると侍女が、「こちらでございます」と、ドアを開けた。
そのまま部屋に入ると、「こちらへおかけください」と、大きなイスに案内される。
言われるままに腰掛けると、ふかふかの立派な作りで、小さなみゆは足が床につかない。
「このイスは、女王様しか座れない玉座だよ。みゆ、とってもかっこいいよ!」
「ううん、そうかな?」
みゆは何だか落ちつかなくて、足をブラブラ揺らしていると、玉座から階段を降りた下の、ずっと離れた床の上に、おじいさんと少年が頭を下げてひざまずいているのが見えた。
「あ!ドニとおじいさん!お待たせしてすみません。そんなに遠くにいないで、もっと近くにきてください」
「と、とんでもございません女王様!先ほどは孫とわしの危ないところを助けていただき本当にありがとうございました。これはほんのお礼の気持ちでございます。お受けとりいただければ、幸いにございます」
「わあっ、プレゼントですか?ありがとうございます!」
みゆがおじいさんの申し出に大喜びしていると、衛兵がおじいさんから籠を受け取った。
衛兵はその籠の中身を簡単に調べると、さっきみゆを案内した侍女に渡す。
すると今度は侍女が念入りに中身を調べてから、深々と頭を下げながら、籠をみゆに持ってきてくれた。
みゆはわくわくしなが籠を受け取ると、中をのぞいた。
植物の蔦で編まれた籠には、小さなオレンジに似た果物がギッシリ詰め込まれていた。
果物はどれも小ぶりで、皮が干からびているものもいくつかあった。
けれども、香りはどの果実も素晴らしく、うっとりするほど甘くて良い匂いがした。
「きっと半魚人とか出てくる危険な畑で、2人で一生懸命育ててたんだね。それをこんなにたくさん私にくれて……。食糧増産とか、治安維持とか、早くやらないとダメだね。ドニとおじいさんたちの他にも、いっぱい苦労している人たちがいるはずだもの」
みゆが籠の中身を見つめながら、眉間にシワを寄せて考え込んでいると、おじいさんがこわごわと、声をかけてきた。
「あ、あのう、お気に召していただけたでしょうか?」
「あ、はい、もちろんです」
「おお!それはようございました!痩せた土地でやっとできた作物でございますから、女王様のお口に合うか、心配で心配で」
「そんなことありませんよ!とっても良い香りだし!皮を乾燥させてお風呂に入れたらとってもリラックスできそう!ねぇ、どうかな?」
そばに控える侍女にみゆが感想を尋ねると、「素敵ですわ!さすが、女王様!今までわたくし、考えつきませんでした!!」と、手を叩いて絶賛してくれた。
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