ドニの思い

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ドニの思い

「実はジュースやジャムにしてもおいしそう!この果物でデザートを作ってくれるかな?」 「もちろんでございます。早速、料理長に申し付けます」 侍女はみゆから籠を受け取ると、そのまま謁見の間から退室していった。 「それでどうでしょう。もうすぐお昼ごはんだし、おじいさんたちも私と一緒に召し上がりませんか?」 「と、とんでもございません!そこまでご迷惑をおかけするつもりは!いえ、あの……ご迷惑ついでと申しましょうか、あの、その……」 急に老人はモジモジしなが、言いにくそうに口ごもる。 「何でも遠慮なく言ってください。私ができることならやりますから」 みゆが任せてとばかりに胸を張ると、老人は恐る恐る口を開いた。 「お、恐れながら申し上げます。実は女王様に、孫のドニを一人前の男にきたえていただきたいのでございます」 「え?」 「と、申しますのも5年前の戦争で両親が亡くなってからというもの、すっかり弱虫になってしまいまして。わしが一人でトイレや畑に行くと言えば一緒に着いて来たがり、わしがドニの分のおやつをうっかり全部食べたと言えば悔しがって号泣して……」 「最後のは、私でも泣きます。でも、ドニが弱虫?」 みゆは納得がいかず、玉座からドニをまじまじと見つめた。 みゆに見つめられたドニは恥ずかしくなって、真っ赤になってうつむてしまう。 「おじいさんのお家のトイレは、家の外にあるんでしょ?」 「はい、よくおわかりで」 「やっぱり!おばあちゃんちも、昔は外にあったもん。あれ、一度庭に出てトイレに行かないとだめだから冬や夜は本当に嫌でした」 みゆは昔を思い出して怖そうに身震いした。 「ドニはおじいさんを心配しているんですよ。トイレと畑は家の外にあるでしょ?半魚人みたいな怪人が外にうろうろして危険だから、ドニはおじいさんを守るために一緒に行きたいんですよ」 「そ、そうなのかい?」 老人がドニに尋ねると、彼は小さく「うん」とうなずいた。 「それに半魚人がブーメランを投げた時、ドニはとっさにおじいさんを突き飛ばして助けました。ドニは弱虫なんかじゃない。彼の機転と勇気をほめてあげてください、おじいさん」 みゆが優しくさとすと老人は、ドニの頭をそっとなでた。 「そうだったのか、ドニ。すまんな、わしはお前をいつまでも子ども扱いしておったよ」 「おじいちゃん……」 やっと祖父に自分の気持ちが通じたドニは、うれしさで胸がいっぱいになる。 そして顔を上げてみゆを真っ直ぐに見つめて訴えた。 「女王様、改めてお願いします。ぼくを女王様の家来にしてください。ぼく、もっとたくさん勉強して、おじいちゃんやみんなが安心して暮らせる世界にしたいんです」 「うん、わかったよ。どんなお仕事をしてもらうかは後で相談するとして、今日からドニに正式な女王の仕事をしてもらいます。みんな、いいよね!?」 みゆが高らかに宣言すると、頭上のガラティアラがキラキラと光を放った。 その光は広い部屋のすみずみまで、明るく照らした。 すると部屋にいた侍女たちや衛兵たち、果てはヒゲを生やした大臣や役人たちも、一斉に恐れおののいた。 「ははっ!すべては女王陛下の仰せのままに!!」 謁見の間にいた、たくさんの大人たちはかしこまって、波を打つように全員がみゆに向かって頭を下げる。 「うまくいったね!みゆ」 「うん、ありがとうガラちゃん。大人の人たち、誰も反対しなかったね。ガラちゃんのおかげだよ」 みゆにしか聞こええない小声で話しかけるガラちゃんに、みゆも小声で応じた。 ガラちゃんがみゆを手助けするために、ティアラをピカピカ光らせてくれたことをみゆも気づいていた。 「お仕事といえば、まずは治安維持のため、怪人たちを取り締まる組織を作りたいと思っています。どこかに良い人材はいないですか?」 みゆが部屋にいる大人たちに尋ねてみたが、ガラティアラの威光を恐れて誰も口を開かない。 すると老人がおっかなびっくり話し出した。 「あのう、それでしたらうちの近所に、元兵士で今は農家の気の良い男がおりますが」 「え?本当ですか」 「はい、以前はこのお城で働いていた近衛隊の隊長だったとか。怪人に村人が襲われた時は必ず助けてくれます」 老人は助けてもらった時のことを思い出したのか、うれしそうに胸を張った。 「ではその男の人に明日でいいので王宮に来てもらうように、おじいさんから頼んでもらえますか?」 「かしこまりました。明日一緒にお城に参ります」 老人はみゆに深々とお辞儀をすると、ドニに「しっかりがんばるんだよ」と言って、うれしそうに帰って行った。
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