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先代女王
「このアスレイア王国はね、少し前はアスレイア帝国って呼ばれていたの」
「王国と帝国ってどう違うの?」
「帝国は他の国をどんどん戦争で打ち負かして支配下にする国のことだよ。だから王国より帝国の方が大きいの」
「ふうん……。なんだか怖いね」
「うん、だから前の女王様も怖い女の人だったよ」
ガラちゃんの声は先代の女王の話になると、ますます沈んでいった。
「ガラちゃんね、生まれてすぐに珍しいからって前の女王様に捕まって、魔法でこの宝石の中に閉じ込められたの。ガラティアラって名前を付けられて、ティアラに宿る生命力になって、女王の膨大な魔力を制御する役目なんだって」
ガラちゃんの声はなんだかとても、悲しそうだった。
「お外に出たいって、お願いしても、『その宝石の中にいれば、食べ物と水がなくてもお前は永遠に生きられる。光栄に思え』って、叱られて……。女王様はガラちゃんに呪いをかけたの。だから前の女王様が死んでもガラティアラは次の女王に代々受け継がれて、ガラちゃんは永遠にこの宝石から出られないんだよ」
ガラちゃんはそこまで話すと、つらそうに押し黙ってしまった。
「そんなことないよガラちゃん」
「え?」
彼女の話を黙って聞いていたみゆは、キッパリと言い切った。
「絶対そこから出られる方法があるよ」
「ないもん、そんなの」
「あるよ絶対!魔法とか呪いとか、21世紀の現代にばかばかしい!きっとその女王はガラちゃんに嘘をついて騙してたんだよ!本当にひどいよ!大丈夫、私が絶対ガラちゃんを、この宝石の外に出してあげる!!」
「本当……?」
「絶対!約束する!!」
「でも、どうやって?」
「ダイヤモンドは地球上で最も硬い鉱物だから、ダイヤモンドを研磨するためにダイヤモンドが必要なんだよね。だからダイヤモンドでガラちゃんのいるダイアモンドを削れば、穴を開けられるかも……。あと、ダイヤモンドは炭素でできているから熱に弱いんだよね。高熱で燃やせばダイヤモンドは溶けて燃やせるんだけど」
「そんなことしたらガラちゃんも一緒に燃えちゃうよ」
「う、うん、そうだね。どっちの方法も危険だよね。何か安全な方法は他にないかなあ」
みゆは真剣な顔でガラティアラを睨み、ガラちゃんは宝石の中で心配そうに、みゆを見つめた。
「ねぇ、ガラちゃん。誰かいい方法を知っていそうな人に心当たりはない?」
「アデラールなら知っていたかもしれない」
「アデラール?」
「うん!天才錬金術師だよ。みゆのイソギンチャクを作ったのもアデラールなんだよ!緑色の瞳の、とっても優しい男の子!!」
「緑色の瞳……?」
ガラちゃんのうれしそうな声に、みゆは5年前の出来事を思い出していた。
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