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その男の子はアデラール
「それから二人で貝殻を拾ったり砂でお城を作ったりして遊んだの。そしたらお昼になって、お母さんが遠くからお昼ご飯だからって呼びに来て。だからまた明日もこの浜辺で遊ぼうねって、約束したんだけど」
みゆはここまで話すとさびしそうに目を伏せた。
「その子、来なかったの?」
「うん。次の日も私は同じ海岸に同じ時間に行って、その日は一日中待っていたんだけど」
その日もその翌日も、男の子は来なかった。
結局、おばあちゃん家にいた10日の間、毎日その海岸に言ってみたが、とうとう男の子に会うことはできなかった。
「うちに帰る前におばあちゃんにも聞いてみたんだけど、近所にそんな小さな男の子はいないって言われたの。お母さんに話しても、『それ夢の話?そんな男の子、見なかったわよ』って笑われて。お父さんは、またいつかその子に会えればいいねって言ってくれたけど、私の話を本気で信じてはいなかったみたい。その日から結局、5年はおばあちゃんのお家に行かなかったから、今年やっとあの海岸に行けたの。そしたら……」
「イソギンチャクに捕まっちゃったんだね」
ガラちゃんはみゆの話を、うんうんと納得しながら聞いていた。
「その男の子はきっとアデラールだよ!このアスレイア王国で緑色の瞳は、アデラールしかいなかったもん。他の人はみんな青色か黒い瞳だし。それに5年前ならアデラールはよく地上に一人で行って、女王様に怒られていたもん」
「ねぇ、あのイソギンチャクも、その男の子が作ったって本当?」
「うん、地上と簡単に行き来ができるように、あっちこっちに作っていたよ。みゆもイソギンチャクのおかげで、普通の人は簡単に入れない玉座の間に倒れていたんだよ。それでノエルが見つけて、この女王様の寝室に寝かせたの。どう?安全にこの世界に来られたでしょ?」
なぜだかガラちゃんは、まるで自分がイソギンチャクを作ったみたいに、自信たっぷりだった。
「確かにどこも怪我はしなかったけど……。やっぱりちょっと怖かったよ……。そんなに自信満々なら、ガラゃんも一度試してみる?」
「やだよ!イソギンチャクに丸飲みされるほど、ガラちゃんは悪いことしてないもん!」
「もう、ガラちゃんたらワガママねぇ」
みゆはプリプリ怒るガラちゃんに、思わず苦笑した。
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