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 憤る有紗の唇から漏れた呪いの言葉に引き寄せられたように、開いた店のドアから、スーツをきめた、すらりとした創が姿を現した。入り口に向かい座っていた有紗に気付いた創は、真っ直ぐに近付いてゆく、彼に気付いたウエイトレスは、惚れ惚れする創の容姿と気品に見惚れていた。  ウエイトレスの前を通り際、「コーヒー」と短く告げる。創の立ち居振る舞いは、その動作一つをとっても人の心を掴んで放さないカリスマ性に溢れていた。それは彼に運命付けられた魅力であり、彼にとっては自然なことだった。       有紗は彼を、冒すべからざる存在であると確信して疑わなかった。 「お待たせ。それで僕に何の用? 重要な用件って言っていたけど」  席に腰掛ける所作さえもが絵になる。店内の客たちの意識が創に集中したように思える。そんな不思議な空気感を創は持っていると、有紗は常々思っていた。そんな、憧れの人が今、自分の言葉を待っている。有紗はそれだけで胸がしめつけられ、言葉が出なくなった。もしや、自分のしようとていることこそ、彼を穢すのではないかと思った。
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