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 創は、大財閥の御曹司である。有名私立学校へ子供の頃から通っていた。学力しか取り柄のない有紗にとっては、別世界の人種であった。しかし有紗の両親は、分不相応であっても、私立学校へ通わせることが、娘への愛の形と思っていたし、有紗もまた、それに応えることが、自分を愛しみ育ててくれる両親への、最高の恩返しになると思っていた。    しかし、幼い頃からずっと遠くから眺めるだけの、憧れの創は今でも雲の上の人であり、大学でもセレブが周囲を取り巻く聖域であった。  学者肌の地味な女子大生である有紗と違い、創は恵まれた家庭の優秀な父と母の血を受け継いで、難なく有紗と同じ大学に入学していた。その華やかなる交友関係もまた、昔から変わらない。彼を取り巻く人々は皆、特別な人たちであり、有紗が近づけるような人達ではなかった。その時までは――。
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