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押し寄せる感情の波に言葉は詰まり、いつしか創を見詰める瞳から零れ出た涙はテーブルを濡らしていた。
いつもクラストップの成績だった有紗の名前と顔くらいは覚えていたであろうが、地味で目立たない生徒だった有紗に、創が関心を抱くことなどなかったに違いない。創は、人生において初めて味わう挫折感をもたらした、意外な人物の言葉に憑き物が取れ、引き寄せられる感覚に、はっと色を変えて有紗を見詰め返した。
「君がそんなにも純粋に僕を思ってくれていたなんて、知らなかった」
この時、有紗に新たな道が開けた。
創と椎名は不思議なほど円満に別れ。椎名は、しばらく衛と付き合っていたようだが、やがてどこで知り合ったのか、学外の男性と付き合いはじめた。
意外だったのは、創の親友であった衛はその後も変わらず創と親友として付き合っていたことだ。創がいうには、浮気癖のある椎名が衛を誘ったのが原因という。自由で大らかな彼らの世界では、よくある話しなのだと。創は無二の親友を選んだのである。
長く孤独だった有紗に創の言葉の意味はよくわからなかった。しかし、創にはかつての輝きが戻り、「真実を告げてくれた有紗が気にすることはないよ」とまでいってくれた。有紗は救われた気がした。
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