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 こうなると、有紗も今までどおりでは居られない。創の近くに居るだけで注目されてしまう。服装に無頓着で、化粧もしなかった有紗だったが、恥かしさに背中を押され、女性の世界へと一歩、足を踏み入れることになった。  ファッション雑誌を買い、メイクの特集記事を読んで流行を学んだ。有紗にとっては未知の領域である。右も左もわからない世界で戸惑い、人に嗤われることもあったが、有紗の気質である持ち前の負けん気の強さは、彼女の知性を存分に活かし、凄まじい速さで女性の常識を学習するや、瞬く間に創たち社交的な学生たちの中心においても、創と並び遜色ない女子大学生へと成長を遂げさせた。それに伴い有紗は、創の友人たちとも親しくなり、友人たちもまた、有紗の賢さと聡明さに創は惹かれたのだと納得するようにもなった。  有紗は幸せを謳歌してはいたが、生まれながらにセレブな人たちの、浮世離れした感覚には違和感も感じていた。  またこの頃椎名は、「魔が差したの」と弁解していたという。やがて椎名は、学校へも滅多に姿を見せなくなった。
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