幻のプロポーズ

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◇◆◇  翌日は、前日の深夜からずっと雨だった。 「あーぁ・・・、行きたかったのにぁ・・・散歩。せっかくの土曜日だったのに」  隣で恨めしそうに私を見るモカの頭を撫でる。 「そんな目で見ないで。今日は仕事も休みだし、私だって行きたかったんだからぁ・・・・けど・・・」  窓の外に視線を向ける。  1ミリも弱くない雨を見ながら、彼の言葉を思い出す。 「お嫁さん・・・・かぁ。ってことは、結婚・・・だよね。付き合う、じゃなくて、結婚が先にくるのって・・・どうしてなんだろう・・・つまり、ゼロ日婚ってことだよね?もしかして訳アリの人とか?」  とはいえ、彼もそれを私に言うには勇気が言っただろう。  ほぼ初対面の私にいきなり結婚を申し込むなんて、ナイアガラの滝でバンジーをするのと同じくらい勇気がいったに違いない。  私の為にそんな勇気を出してくれたと思うと、益々彼が愛おしい。  そうだ、そこまでの勇気に私は応えなくてはならない。それには、次会った時に、はっきりと返事をしなくては失礼になるかもしれない。  大学を卒業して3年、今の私は確かに、結婚してもおかしくない年齢だ。 ――結婚・・・  もしも彼とそうなれば・・・連絡先だって当然交換するだろう。LINEとか?  朝起きたら『おはよう』なんてLINEをするのだろうか。それにいくらゼロ日婚とはいえ、デートくらいはするはず!  デートとなれば、手を繋いだり、当然その先だって・・・・。  ひゃーぁー!やめてぇ、それはダメよぉ!  だめだ・・・これじゃ私、完全に変態だ。  けどしかし、妄想が止まらないぃぃぃ・・・。  これからは神々しいあの笑顔が毎日、私だけに向けられる・・・。  ぅぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ヤバい、妄想死にするとこだった。  そうよ、彼がいくらお嫁さんを探しているからって翌日に結婚するわけじゃないんだから!つまりあれは、結婚前提に付き合いたいってことだんじゃないの? 「・・・・よし!決めたわ、モカ」 『ワン』  私は覚悟を決めた!  彼のお嫁さんになる!きゃっ♡
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