幻のプロポーズ

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 返事。返事。返事。  プロポーズの返事!  頑張れ、私! 「あっあの・・・・この間のお話なんですけど・・・・」 「え?」  あれ?返事・・・待ってた・・・はずだよね? 「あ、ほら・・・その、お嫁さんっていうか・・・」 「あぁ~、、うんうん、もしかして考えてくれたの?」  私は姿勢を正して、身体を彼の方に向けた。 「あのっ、謹んでお受けさせて頂ければと!!!!」 「え?本当に?」  彼の顔が一気に破顔した。  うっわーっ!輝いているを通り越して、後光がさしておられます。  神・・・完全に菩薩の微笑みじゃぁありませんかっ。  よかった。  こんなに素敵な笑顔が見ることができて、お受けして本当に良かったと思う。  そしてこの瞬間から彼は私の、婚約者。  あぁ、なんて素敵な日だろう。  私たちは生涯この日を忘れないだろう。  きっと毎年、今日という日を記念日にして祝うに違いない。  彼はくしゃくしゃの笑顔でレオン君を抱き上げた。 「やったー!やったな、レオン!芽愛ちゃんがお前のお嫁さんになってくれるぞ!」 「・・・・・・・・は?」  思考が一瞬で止まった。いや、世界が止まったのかもしれない。 「あの・・・」 「ん?」 「結婚するのは・・・・レオン君?」 「そうだよ。俺、どうしてもレオンを父親にしてやりたくて!」 「えぇ――っと・・・・芽愛は・・・・私・・・なんですけど・・・・」 「えっ」  レオン君を抱いたまま、彼がフリーズしたのがわかる。  今、一体・・・何が起きている?  私と彼を包む空気が一瞬にして時を止めた。  私の周りだけ、急ピッチで冬になったみたいに、冷えていくのを感じた。  えーっと・・・私・・・レオン君と結婚するの?・・・いやいやいやいや。  なんで?どうして、こうなった? 「えっと・・・芽愛ちゃんは・・・君・・・?」 「はい・・・」  私がコクリと頷いた次の瞬間、彼の顔が公園の紅葉した紅葉のような朱に染まった。 「あっと・・・・俺・・・そのっ・・・・」 「いいっ!いいです!言わないでくださいっ!ってか、寧ろ黙ってくださいっ」  穴があったら入りたいとは、まさにこのことだ。私は両の掌を思い切り彼の方に向けた。 「ごめんなさいっ!私が悪いんです、全部私が悪いんですっ!だからっそのっ」 「あ、いや・・・俺の方こそ、言葉が足りなかったというか・・・えっと、もっときちんと伝えるべきだったというかっ・・・」  彼が言葉に詰まっている。そりゃそうだ。こんな時、なんて言ったらいいのか私だってわからない。
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