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「本当に・・・本当に、すみませんでしたっ!」
思い切り頭を下げてそのままモカを抱き上げると私は猛ダッシュした。
「あっ、ちょっとっ待って!芽愛ちゃんっ!」
背後から私を呼び止める彼の声が聞こえたけど、立ち止まるわけにはいかない。恥ずかしすぎて、呼吸のしかたすら忘れそうだ。
走りながら涙が込み上げてきた。
本当に馬鹿だ・・・私は。
彼は最初からずっとモカのことを聞いていただけだったんだ。
それを私が恥ずかしい勘違いをして、彼を困らせてしまった。
公園の出口まで来て、ようやく私は立ち止まった。
モカが『どうしたの?』というように私を見上げている。
「モカ、どうして私はこうなんだろうね・・・もう、嫌んなっちゃうな・・・私のばか・・・」
涙は止まることを知らず、あとからあとからあふれ出す。それをモカがペロペロと舐めて私を慰めてくれているけど、涙は一向に止まる気配がない。
「帰ろう」
モカをそっと地面に降ろした時だった。
「芽愛ちゃんっ!」
背後からかけられた声に、ビクリと身体が震えた。
「芽愛ちゃん、ごめん。話を・・・少し話をしたいんだけどいいかな?」
彼に背を向けたまま私は頷いた。
散々迷惑をかけて逃げ出してしまうなんて、中学生かよ、私。
彼が話があると言うなら、せめてちゃんとそれを聞くのが大人ってものだ。
そう思うのにどうしても振り返る事ができない。
俯いた顔さえ、上げることすらできずにいると、彼が私の前までやってきて向かい合う形になった。
「芽愛ちゃん、勘違いさせるような言い方をした俺が悪い。だから、芽愛ちゃんは気にしないでほしんだ」
私は俯いたまま、ぶんぶんと首を横に振った。
そんなわけない、彼が悪いわけがない。
どう考えたって、勝手に勘違いをした私が悪いに決まっている。
けれどそんな彼の優しさが今は辛い。
彼を困らすだけだとわかっているのに、気が付けばしゃくりあげる程に泣いていた。
「それで・・・確かに最初はレオンのお嫁さん探しが目的だったんだけど・・・その、よかったら、今度食事でもどうかな?」
「・・・・え?」
これは幻聴だろうか。
とうとう私の耳は、聞きたい言葉を作り出すまでに進化したのだろうか。
驚きのあまり涙は止まった。
泣きはらし、最悪な顔をしているだろうことも忘れ、ぽかんと彼を見ていると、彼は照れたように笑って言った。
「犬同伴で入れるカフェがあるんだ。そこのランチが旨くてさ。よかったら今度の日曜日一緒に行かない?」
これは本当に幻聴なの?
けど・・・もう、幻聴でもなんでもいいっ。
「行き・・・行き・・・・行きたいです・・うぅ・・・・」
言うと同時に再び涙が溢れた。
それは、さっきまでの涙とは違う幸せな涙。
そんな私の涙を、彼の細くて長い指が優しく拭ってくれた。
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