2091年秋 香乃86歳

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2091年秋 香乃86歳

【本心、断髪、全う】 ギャルが新人を見つけることが多い。しょっちゅう島の中をほっつき回っているからだろう。そしてみんなに報告して回る。忙しく作業していることにやりがいを感じる一面もありますので。 立派な一軒家からアパートへ→大切にされ度が低くなった。そりゃそうであるべきだろう。 オトモダチの影が拾われた→人を信じることもできるようになった(オトモダチが一番いろいろと拾われている。【愛想笑い、友達、人間不信】で言われているが、ピストルスターも捨てるべきではなかったのかもしれない、いつか拾われてもおかしくないと少しは思っていた。) アムカが一度拾われた→やっぱりちょくちょく自傷に頼ってしまう。ねーちゃんも自傷していたが、ただの悪い習慣というだけだったのでアムカは拾われていない。また少し鬱っぽくなってしまったのだろう。 ねーちゃんの影が一度拾われた→姉を嫌いになりかける。子供が産まれた辺り? 小4は何も拾われていない→小4を捨てたのが、「坂口香乃」。でも小4は消えていないので少しは持っている。 一体全体今何歳だよ→ピストルスターはずっと変わらないし、しばらく新入りもなかったので香乃の実際の年齢がわからなくなってしまった。階段島シリーズでは七草が何も捨てずに成長なんてできるのか?と悩むが、香乃も何も捨てずに成長する方法を知ったのだろう。 香乃は86歳→日本の女性の平均寿命は87歳。平均と比較して少し短いし、2091年にもなればもっと伸びていそうなものだが、まあ病気か何かになったんでしょう。でもベテルギウスたちからしてみれば十分生きたと思える。 もう15歳になるつもりすらなかった→中3の時自殺してしまおうとしたから。 アムカが来るのが遅い→ねーちゃんが来た時、何か嫌な予感がしたのと同じように、アムカも今回の人は何かまずいのではないか、と嫌な予感がして来るのが遅くなったのかもしれない。 私たちは皆、現実の香乃に捨てられた人格なんだけど→それまではこの島の正体は本人が探すのが暗黙の了解となっていたが、おばあちゃんは探し回るなんてことはできないだろうし(ひょっとすると島にも最初から家に来ていたのかもしれない。)、新人が来るのも久しぶりでどうしていたのか忘れてしまった。 オレたちを見ていた目を遠くへ移して、自分の手を見て、オレらの座る椅子の脚を見て、それからゆっくりと口を開いた。→遠くの空、地面、相手。何かを打ち明ける時にする視線のやり場はやっぱり今も変わらず。 屋上へ続く階段の話は、本当は気づいていたのに認めれなかった気持ちを説明するのにどこかで使いたいなーと思ってたんだけど使う場面がないまま最後の方に来ちゃったのでここにねじ込まれましたw 本当は、死ぬのが怖いんだってわかってた。でも、この世界で生き続けることの方が怖かった。アムカを捨てた香乃は、生きる怖さより死ぬ怖さの方が大きくなった。死ぬ時に怖いだなんて言ってられない。もう自分の死を受け入れたのだろう。 ショートヘアも似合ってたものね→やっぱり香乃はロングの方が好きだし、自分にはロングの方が似合うと思っている。ショートの自分はちょっと見慣れない、懐かしい。 ベテルギウスが髪を切った理由→【ごみ箱、ピストルスター、アムカ】の最後で髪を切ったことに触れられているが理由はきちんと述べられていない。初めてここで理由が明かされる。失恋したからってだけじゃない。中学を忘れたかったから。もう中学とは違うんだって、自分にわからせたかったから。 【ベテルギウス、護美、永遠に。】 参考までに…ベテルギウスの表面温度は3,500 K、ピストルスターは11,800 K。ちなみに太陽は 5,778 K。今のところ宇宙で一番明るい星はLBV 1806-20で、2番目がピストルスターだそう。ピストルスターが太陽の明るさの500~600万倍に対してLBV 1806-20は太陽の4000万倍らしい。桁違いだな。 あの夜のことは今だに鮮明→ベテルギウスがこの島に来たのは2020年。それからもう71年。半世紀以上。でもベテルギウスが現実で過ごした日々のことは変わらず鮮明に記憶にある。その鮮明な記憶の一つに昂希に会いに行ったことがある。あの日の出来事は夢だったのかもしれないが、それでも確かな現実の一つとして記憶に留められている。 ベテルギウスはもうないのかもしれない→2020年初めはかなり暗くなって超新星爆発がいつ起きるかわからないと言われていたが、まだ超新星爆発は起きないと言う見解が示された。でも今地球で見えるのは530年前の光なので、実はもうないのかもしれない。(これまでベテルギウスまで640光年と言われてきたが、ベテルギウスはまだ超新星爆発しないという発表と同時に530光年先だと発表されたらしい。) 昂希をベテルギウスと呼ぶのは→ネメシスはあるのかないのかすらわからない。でもベテルギウスは確実に、もしかするともう消えているのかもしれないが、存在していた。「優しい昂希」だって、あるのかないのかすらわからないものじゃなくて、一度は確実に存在してくれていたものだと信じたい。 最後の眠りにつこう→この島に本来生理的欲求はない。それなのにご飯を食べ、眠るのは、そうしたいから。食べるのも、眠るのも、人間に与えられた喜びだとわかっているから。 お告げはすんなりと心に通知された→明日死ぬとわかる。オトモダチの一部や乙女が消えた時も、こんな風に心に通知されたのだろう。 特別なことなんてない→相変わらず昂希の夢を見て泣いて。普通の食事をして、アムカとカラオケ対決をして。ここへ来てからの何十年、幾度となく繰り返したこの島での日常。 特別なことはない、でも普通ではない→ピストルスターが偽物島で過ごした最後の1日と同じ。あの1日、ピストルスターは現実で過ごした「普通の1日」を辿った。同じように、みんな最期に「普通の1日」を辿っている。 護美→これは当て字。「周囲の美しさを守る」という意味が込められているらしい。 家のごみ箱にあるもの→どれも、見るのは少し苦しい。でも捨てたくはない。大切にしていたい。オトモダチの手紙や結婚式の招待状はずっと残っていた。 誰かの喪中ハガキ→これは一体誰の?親?姉?夫?小方?とにかく、大切な誰か。(個人的には夫だと思ってる。少し前でおばあちゃんが「夫はもういない。」って言ってるし。) 捨てられた意味が少しはあると思いたい→美を護るためのごみになって、香乃の人生を少しでもいいものにできたなら、まだ捨てられてよかったと思える。 そもそもどうしてピストルスターは捨てられた?背中を押したものは何?→ピストルスターが捨てられたのは初夏。失恋して2ヶ月くらい経っていると思われる。もう、いい加減高校生にならないといけない。いつまでも中学4年生ではいけない。そう思ってやっと、卒業式以来通れていなかった帰り道を歩けたのかもしれない。 現実の香乃も、少しは昂希のことが大切だったのかもしれない。→家が立派な一軒家からアパートへと、大切にされ度は低くなったとは言え、完全にその気持ちが消えてしまったら乙女のようにこの島からさえ消えてしまうはず。心の中にしまってあるなら、少しは昂希のことを大切に思っているのだろう。 結婚生活とかじゃなく普通に幸せになってください→それはベテルギウスも昂希に願っていること。結婚が人生の幸せの中心じゃない。よく結婚をゴールインとは言うけれど、それがゴールじゃないのと同じ。結婚生活がうまくいくことも含め、人生が幸せなものでありますように。 昂希が結婚式に来た→南の海で昂希と会ったときは、式に行くつもりはないと言っていた。あの時の出来事はきっとピストルスターが幽体離脱したんじゃなくて夢だったのだろうが、何かが昂希に届いたのでは? 喜びと悔しさでいっぱい→幸せになれ、なんて、ベテルギウスにとっての幸せは、あなたがいないと駄目なんだよ。 もし今も生きているなら→ベテルギウスは昂希が今も生きているのかどうかわからない。なのでごみ箱の喪中ハガキは少なくとも昂希の死を知らせるものではない。もし仮にもう昂希が死んでいたとして、喪中ハガキは自分に届くのか?届かないだろうな、と思っている。 ギャル、小4、オトモダチはおばあちゃんの家に集まる→おばあちゃんは多分寝たきりで動けない。じゃあ自分達がおばあちゃんの家に行って、死ぬ時ひとりぼっちじゃないようにしてあげようと思っている。優しい。 ねーちゃん、アムカ、ベテルギウスは海に行く→現実に続くと言われている南の海を見ながら、自分が現実で生きた日々について思い出したい。 ベテルギウスが笑うところを初めて見た→それまで過去の自分を少し嫌悪したり憐れんだりしていた。でも死ぬ間際、こいつらともお別れか、と少し情が湧いた。やっと本当に素直に笑顔を向けられた。 オトモダチは珍しく少し笑っている→本来オトモダチは愛想笑いも持っていた。でもオトモダチから愛想笑いが消えて大体70年も経ってしまうと、笑わないオトモダチの方が当たり前になってしまい、笑っているのは珍しい。 「うん、…またね!」「…じゃあね。」→ギャルは、「またね」を信じようとしている。でも、そんなのはもうあり得ない。ベテルギウスは、「またね」ともう一度を信じる勇気を持てるギャルを少し羨ましく思いながら、「じゃあね」と言っている。 この時期ならベテルギウスが見えるのは0時過ぎ→香乃が死ぬ時は、昂希の誕生日、オレがフラれた時間にしたつもりだった。うっかり昂希の誕生日じゃなくて推しの誕生日にしてしまった…だって時期似てるんだもん…みんな秋に生まれるから混乱するんじゃん…あれ昂希の誕生日っていつだっけ…… 現実に生きた日々はほんの僅か、でもそれが全て→それぞれが現実で過ごした日々はそっくりそのまま鮮明。いくらごみ箱島で過ごした時間が長いとは言え、思い返すのは現実で過ごした日々。昂希と過ごしたのは香乃の86年の人生の内たった2年。でもそれがベテルギウスにとって一番大切なもので、それが全部。 虚像の燭=昂希の優しさだとか、ベテルギウスが思う昂希だとかはもうないかもしれないけれど、ベテルギウスの心を暖めてくれるもの。 永遠に輝く=ベテルギウスは香乃生きている間ごみ箱島でずっと変化することがない。ずっと変わらず、昂希のことを心の拠り所にする。 【The end of the Journey.】 恋以上で、恋未満だった→恋人以上、恋人未満。友人以上、友人未満。ただ昂希が大切だった。 そうだろう?→ねえ、ずっと『昂希』を信じ続けていいよね? プロローグ「これは、フラれた一女子が叶わぬ恋に苦しみ続ける話であり、フラれた一女子が失恋を受け入れ、立ち直った話でもある。」⇔エピローグ「これは、フラれた一女子が、そこから立ち直るために捨てた、一つの我儘な感情の話。」→立ち直った話、と言うのは現実の香乃の話。ごみ箱島でピストルスターたちの物語と並行して、現実の香乃は失恋を受け入れ、成長していった。この小説が始まった時点、ピストルスターが捨てられた時点で香乃は立ち直っている。だから、立ち直っ話。でもこれはベテルギウスを中心とした話なので、「捨てられた一つの感情の話」。 【表紙】 手を伸ばした先の赤い星はベテルギウス。場所は昂希の元へと走った南の海。
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