プロローグ

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 冷たい。ああ、どうしよう。手足の感覚がない。  まだ夢の中にいるのかと思ったが、身体に受けた衝撃は現実のものだった。 「おとうさん……おかあさん……」  周囲にはガラクタの山。家族の姿はどこにもない。どうしてひとりぼっちのまま動けないのだろう。 「……おねえちゃん」  いつまでここにいないといけないのか。早く誰か助けて。  寒くて、寒くて、眠くなってきた。  いっそ眠ってしまったほうがいいのかもしれない。 「……おねえちゃん」  今は何時なんだろう。夜なのか。それとも朝なのか。  だんだん息が苦しくなってきた。  もしかしたら死んでしまうのかもしれない。 「死ぬ……?」  漫画やアニメの世界なら死ぬことはよくある。  でもここは現実の世界だ。  本当に死んでしまうのか。  いやだ。  死にたくない。 「死にたくないよ、おねえちゃん……」  ガラガラと頭上の何かがけたたましく鳴りはじめる。  グラグラ、ドッシーン。  時間が来た。  下から突き上げられる。  ひとりぼっちで死にたくない。 「おねえちゃん、助けて……っ」  ビデオが途切れたように、目の前が真っ暗になった。
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