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二〇二〇年八月。本来なら、ぼくらの国でオリンピックが開催されていた夏。
ぼくは不思議な事件に巻きこまれた。
関西のとある県内にある阿笠(あがさ)町。ぼくは阿笠小学校に通う四年生。名前は灰崎(はいざき)アポロ。アポロは本名である。おとうさんが日本人。おかあさんがベルギー人。
おかあさん似のぼくは英語がしゃべられてずるいなあとか、女みたいな顔しているなあとか散々言われたが、全部が合っているわけではない。
まずぼくは英語が話せない。英語のテストも国語のテストと同じくらい。だいたい八十点くらいかな。百点はとったことがない。
女みたいな顔しているのは間違っていないと思う。ぼくとしてはあまり嬉しくない。
かっこいいとかイケメンとか言われるほうがよっぽど嬉しい。言いかたを変えると美少年。ぼくのおかあさんはぼくのことを可愛いと褒めてくれる。
何が言いたいのかというと、ぼくは英語が話せないハーフの美少年だが、女の子にはまったくモテないのだ。
そんなぼくだけど、四年生になってから同じクラスの女の子に恋をした。
「アポロ、英語の宿題やってきた?」
「もちろんやってきたよ。また交換するの、メアリちゃん」
「ちゃん付けは気持ち悪いからやめてって。メアリって呼んで」
「う、うん。メアリ」
間引(まびき)メアリ。おとうさんが日本人。おかあさんが外国人。どこの国の人かは聞けていない。ネコみたいに大きくてツンとした目に、ぼくはいつもドキドキしてしまう。
メアリはクラスの人気者で、誰に対しても平等に接してくれる。けっしてぼくだけに対等ではないことはわかっているが、それでもぼくは嬉しかった。
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