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終章 二十一歳 冬
陽斗の命は、私の中で生きている――
絶望しか感じられなかった日から、この想いに辿り着くまでに どれくらいの歳月が必要だったろう。どれくらいの涙を流しただろうか。
陽斗のいない寂しさと悲しみ、彼の死と引き換えに自分が生きていることへの やるせなさ。今も消えることはないけれど……
「私、精一杯生きるよ。陽斗との二人分の夢をのせて……!」
陽斗に、そして自分自身に言い聞かせるように呟く。この想いを、生涯 忘れることは出来ない。
*
マラソン大会の会場。
運動場の片隅で靴紐を結び直した私は、ゆっくりと立ち上がった。
本部テントで受付を済ませ、他の選手が集まっている場所へと向かう。
「出場者の皆様は、スタートの位置について下さい」
観客たちの ざわめきの中、再び流れてくるアナウンス。
選手たちの動きに沿って、数歩前へと進み出る。
「これからも ずっと一緒にいよう」
「マラソン大会、いつか必ず一緒に出場しよう!」
陽斗への想い、そして彼と交わした約束を胸に、私は今スタートラインに立っている。
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