序章  二十一歳 冬

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「美織は俺が一生守る。これからも ずっと一緒にいよう」  そう告げてくれた陽斗の真剣な眼差しが、鮮明に蘇る。 「マラソン大会、いつか必ず一緒に出場しよう!」  まだ中学生だったあの頃に交わした約束。その言葉通り、大人になった今、私たちは――   「出場者のかたは、本部テントで受付を済ませてください」  会場内に響くアナウンスと次第に大きくなる観客たちのざわめきに、いよいよ この時が来たと緊張が高まる。それを鎮めるように、胸に手を当て深呼吸を一つ。 「陽斗、最後まで走りきろうね!」  呼びかけて、私は靴紐をしっかりと結び直した。
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