第二章 中学二年 冬

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   *  父は昔、マラソンの選手だった。  決して悪い成績ではなかったが、他の優秀な選手に埋もれ、その才能が認められることはなかった。  それが とても悔やまれるのだろう。父は、引退した後も娘の私に望みを託すべく、幼い頃から走る訓練をさせた。 「お前が男の子なら、もっと鍛え甲斐があったんだがな」と、いつも口にしていた。  私は父に似ず、運動が苦手なうえに体もあまり丈夫ではなかった。  少し走っただけですぐに息が切れてしまう。目の前が真っ暗になって倒れてしまったことも何度もあった。  その度に父は深い溜息をつきながら 「こんなことでは話にならない」と、首を横に振るばかりだった。  娘の想いを顧みず、ただ自分の夢を追い求めるだけの父とのマラソンは、私にとって苦痛以外の何ものでもなかったのだ――     **
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