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第一章 中学二年 秋
陽斗との出会いは、七年前。
丁度 庭の紅葉が色づき始める頃だったろうか、突然うちで一緒に暮らすことになったのだ。
そう、それは本当に突然だった。
母が言うには、陽斗は遠い親戚にあたるそうだ。家族を事故で亡くし他に身寄りがない為、独り立ちできるまで うちで面倒をみることになった――というのは、彼がやって来たその日に父から聞かされた。私と同じ中学二年生だということも。
まったく、年頃の娘がいるというのに同い年の男の子を一つ屋根の下に住まわせるなんて、父も母も心配じゃないんだろうか。
「はじめまして、よろしくな」
真っ直ぐに向けられた澄んだ瞳に、とぎまぎしてしまう。屈託なく笑う彼に、どう接したらいいのか分からなくて、私は唯 無言で頷いた。
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