第一章 中学二年 秋

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 一緒に暮らすということは、必然的に通う中学校も同じになる。  二年生は五クラスあって、私はB組。転校生の陽斗は、人数が一人少なかったE組へ編入された。  陽斗は学校でも すぐに溶け込んで、人気者となった。  成績も ずば抜けて良いらしい。私も勉強は得意なほうだったけれど。彼が来てすぐにあった二学期の中間テストの結果を知った時、私は自分の答案を両親に見せるのを初めて苦痛に感じたほどだ。 「ね、美織んちへ遊びに行きたいんだけど」  今まで大して親しくなかった女子たちが、やたらと声をかけてくるようになった。友達と呼べる人が殆どいなかった私は、それだけで心が躍ってしまいそうになる。  けれど、彼女たちの目当てが陽斗なのは明らかだった。 「陽斗くんにも会えるかな」 「数学の分かんないとこ、陽斗くんに教えてもらいたいんだよね」  そうストレートに言ってくる人もいれば、もじもじと恥ずかしそうに言葉を濁す人もいた。  そんな時 私は、彼のお蔭で自分も人気者になったような、でも私はあくまでおまけなんだと虚しいような、複雑な気持ちだった。
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