第二章 中学二年 冬

3/8
前へ
/41ページ
次へ
 黙ったままでいる私に、彼は一人で喋り続ける。 「年に一度の大イベントなんだってな! 父さん、ものすごく張り切ってるし。本当、楽しみだよな」  陽斗は、私の父を「父さん」と呼ぶ。  どうやら父は、陽斗にそう呼ばせるのを気に入っているようだ。私が呼ぶときなんかよりずっと嬉しそうな顔をしている。  父は きっと、陽斗が実の息子だったらどんなに良いかって思っているだろう――そんな考えが湧き上ってきて、いたたまれなくなった。 「それで父さんがさ、俺にも出場してみないかって。もちろん、美織も出るんだろ」 「私は……出ないよ」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加