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加納は、多少打撲しただけ大事に至らずはすんたのだが。輝光のあの態度はまずい。
僕が家に帰ると、輝光は今日の出来事などなかったように、ソファで寛ぎ新聞に目を通してた。
「輝光、ちょっと話いいか!」と語気を荒げると、
彼は笑顔でもちろんと。
そして、"今日の学食での出来事は、流石に可笑しい"と僕の友人にあんな暴力を振るうなんて……
なのに、輝光は本当に面白いことを聞いたかのように、
「ふはははっ!蒼はあいつの匂いに気がつかないから、しょうがないけど、あいつは多分蒼の魂の番だった男だよ」
オメガ性を手術で失ってなければ、蒼は多分あの男と番う予定だったんだ。と事も無げに、だけどそんなことはどうでもいいように、なげやりにいい放った。
だから、あいつは隙あらば蒼をものにしようと画策してるにちがいない。そ れ に……
"蒼は、もう未来の伴侶が決まってるんだから、そんな危ない男のそばをウロウロしないの"
とクツクツと笑った。
翌日、僕は加納の家に謝罪と見舞いに行った。
そうすると、少し怯えたような表情の加納が出迎えてくれた。顔に残る鬱血のあとが痛々しい。
そして、何故こんなことになったのか、真実を知らないままなのは、申し訳ないと思い、全てを話すことにした。
僕が元オメガなこと、輝光とは将来を約束していて、いまも、恋人のような関係であること。
それを聞いた加納は、
「どうりで」とそして続いて
「確かに、蒼のこと気に入ってた。もしオメガなら番にって。だけどあんなにあのアルファの匂いがキツいと流石にちょっとね」と。
だから、確かに自分も迂闊だったから今回はお互いに水に流そうと。言ってくれた。
そして、また大学でと言って加納の家を出たときだった。
「蒼……」
とまるでその声は、甘ったるく淫靡な雰囲気をまとい
でも服従したくなる声で自分を、呼ぶのはこの男しかいない。
「輝光も来てたの?なんなら謝ってく?」と意地悪く聞くと、"謝る理由がないからしない"と恐ろしいことを口にした。ただ、蒼が心配なだけ。変な男の家に行くから。と
だから、はっきりと言ってやった。
「僕は、輝光の伴侶でしょ?誰かに目移りするわけない」
その時の輝光の顔は、今まで見たなかで一番の笑顔だった。
だから、早く家に帰ろうと僕は、彼の耳に唇を寄せた。
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