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6月下旬…この頃になると学園行事である“七夕祭り”に向け、生徒達は張り切り始める。
我が校の理事長は…少しばかり?
いや、かなり変わった人で…“お祭り好き”なのだ。
実の孫である要と司に言わせると『お祭り爺』だそうだ…
僕達からすれば、イベントが多い方が楽しくはあるけれど。
夕食後…寮の一階ホールで匡とソファーに座り、七夕飾りを制作中…
「お兄ちゃん」
不意に背後から蛍の元気な声が聞こえてきた。
振り返れば、風呂上がりであろう様子の、上はタンクトップ、下は短パンの出でだち。
「わ、可愛い」
「てか、女の子みてぇで萌える♪」
蛍の格好に周囲の連中の目が釘付けになっている。
…この学園は“男子校”で…蛍は…
実は、14歳の女の子であるが事情があって、ここに居る。
勿論、女の子である事は周囲の者には秘密にしている。
僕は親類であるから、当初から知っていたが…
幾ら、カウンセリング生活を送ってきた頃の栄養失調がたたって、体つきが幼いからと言っても…
矢張、女の子に違いは無くて…ぱっと見でも、バレそうなレベルだ…
「ちょ…マズイって」
犬族であるが故に、匡は入学当初から嗅覚で蛍の性別を知ってしまっていた。
匂いでバレない様に、“病弱でやっと学校生活を送られる様になった、腹違いの弟”として、僕の隣の部屋に居させている。
渉先生の助言で…日頃も僕か匡が付きっきりで面倒を見て、他の連中を遠ざけ…
男性恐怖症を“対人恐怖症”と偽り、兄の僕か幼馴染みの匡以外が関わると“パニックの発作を起こす”と言う事にしている。
幸いにも…元来の犬好きのお陰で匡の事を恐がらずに居てくれる事で、助かった。
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