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【アラノイアス・オンライン1】
慎吾(以下:ゴ)「皆んな、やっと会えたね!」
圭三(以下:サン)「ゴォ、元気か?」
衣智子(以下:イチ)「おお、久しぶり!」
奈々美(以下:ナナ)「約3ヶ月ぶりだね!」
イチ「ゴ、あんたそっちに行ってちょっと太ったんじゃないの?」
サン「そりゃあ神奈川より岡山の方が食べ物美味しそうだもんなぁ」
ナナ「あれぇ、もしかしてもう彼女とかできたんじゃない?」
ゴ「おいおい、転校してからまだ3ヶ月だよ? 彼女なんて出来るわけないじゃん」
イチ「そりゃそうだ。 この鈍臭いゴに彼女なんかすぐ出来るわけないよ」
ゴ「イチ、それもムカつく」
3人「ハハハ!」
ゴ「い・ま・は、彼女はいないけど」
イチ「ムキになるな、ムキに」
サン「いくら2人が幼馴染みでもさぁ、イチがゴに対する当たりは相変わらずキツいよなぁ」
イチ「いやいや、こんなのまだ序の口序の口」
ナナ「ハハハ! ところでそっちの生活は少しは慣れた?」
ゴ「俺は岡山に来ても神奈川の時とあんまり変わらないよ。 まぁ、いろいろ挨拶とか入部とか面倒だったけどね」
サン「そっちでも野球部に入ったのか?」
ゴ「まあねぇ。 一応サンとの約束もあることだし」
イチ「やっぱり、転入生の挨拶ってやつはいろいろと難しいんだろうねぇ。 知らんけど」
ゴ「本当にめんどくせぇよ。 引っ越しをして学校でいろいろバタバタしていたから、自分の部屋もまだ片付けてないよ」
サン「片付けていないっていうけどさぁ、何んだお前のその部屋は?」
ナナ「この小さいカメラでもゴの部屋の汚さがよく分かる」
イチ「ナナ、ゴの部屋の汚なさは子供の時から変わらないから」
ゴ「うるせえなぁ。 でも、何で皆んなの背景だけが白くなってるの? 俺の画面だけ部屋が写っているけど」
サン「いや、俺は何もしてないぞ?」
イチ「3人の背景が白いのはこっちの問題なのか?」
ナナ「なんか設定とかあるんじゃないの?」
ゴ「ああ、これかな? ポチッ! よし、これで皆んなと一緒の白バックになった」
イチ「ゴは昔からバカだから」
3人「ハハハ!」
ゴ「イチは相変わらず口が悪いなぁ」
サン「でもゴはイチに教育されていると俺は見た」
ナナ「そうそう、イチは高校入学の時から『ゴォ、ゴォはどこだぁ』って大声で叫んでたよねぇ」
イチ「ハッハッハ、だってゴは幼稚園の時から私の家来だから!」
ゴ「イチ、お前はイチイチうるせぇ」
3人「ハハハ!」
ゴ「まったく。 で、そっちはどうなの?」
イチ「そうねぇ、暑くもなければ寒くもないよね?」
サン「そう言われてみればそうだなぁ」
ナナ「うんうん、確かにそうかも。 岡山はどうなの?」
ゴ「引っ越しする前に岡山は『晴れの国』って聞いていたんだけど、なんかだか毎日雨ばかりだよ」
サン「そりゃまぁ、神奈川よりそっちの方が梅雨入りは早いからな」
ナナ「ゴが3月に転校した後に5月に修学旅行があって、そしてもう6月の終わりかぁ。 なんか月日が経つのは早いね」
イチ「あっという間にあたいたちはジジイとババアになって死んでいくだぁねぇ」
サン「イチのババアって、なんか怖いな」
ナナ「ハハハ、ウケる。 イチはババアになっても変わらずそのままなんだろうね」
イチ「ゴォ、ゴのクソジジイはどこだぁ!」
全員「ハハハ!」
ゴ「ああ、くそっ! 俺も皆んなと一緒に修学旅行に行きたかったなぁ」
3人「ゴォ、そんなこと言うなよ」
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お互いの顔を見ながらオンラインで会話するって、最初はなかなか慣れないものだね。
修学旅行に行く前の3月末に、僕は岡山の桂ヶ丘高校へ転校してしまった。お父さんには「修学旅行だけは行かせて」と頼んだけど、それは無理な話だった。家族の皆んなの都合もあったから、僕だけワガママを言えない空気だった。ただ僕は修学旅行に行って、奇数組の皆んなと楽しい想い出を作りたかったんだ。
だからこうして久しぶりに皆んなと再会できて本当に嬉しかった。あの時は言えなかったけど、僕は机の下で自分の足を強く握りしめ、涙を流すのを必死に堪えていたんだ。
皆んなと過ごしたあの楽しい時間を、オンライン同窓会でもう一度楽しみたいと思いながら。
今ではこんな仲のいい僕たちだけど、実はこれでもお互いにいろいろな事があったんだ。
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