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第一章
手の様子がおかしいと気づいたのはあの時から......
かわいく包んだプレゼントを渡した時。
リボンはピンクで、同じピンクの袋に結びつけている。袋は膨らんでおり、外からひと目でぬいぐるみだと気づくはず。でも、優子はわからないふりをし、大げさなくらい嬉しそうな表情で声を上げた。
「なになに? あたしにくれるの?」
と言いながら、私の手の中からプレゼントを受け取った。
その時、パキッと小さな音がした。
気のせいだと思い、別に気にしていなかった。
「うん、あげる。今日誕生日でしょう」
「嬉しい! 覚えてくれたの?」
忘れるわけがない。
インスタの上に書いてある。
そして、一週間前に、ショッピングモールでぶらぶらしている時、優子は言った、あのピンクのうさぎが欲しいって。
わざと言ったのがわかっている。別にいいけど、その方が悩まずに済んだからだ。
ピンクのうさぎ耳は袋から出てきた。あとふわふわでかわいらしい体。目玉はブラウンのガラスビーズ、左の耳にリボンを飾っている。
「かわいい! なんで知ってたの?あたしはこれが一番欲しいの」
「覚えてるよ。優子が欲しいって言ったから」
「やっぱり親友ね! 言ったこと全部覚えてくれる。すごく嬉しいわ! ありがとう」
優子はぬいぐるみを抱えて、私に微笑んだ。
私も、多分笑顔で返した。
お互いバイバイと言い、しばらく優子の後ろ姿を見詰めていた。うさぎのぬいぐるみはまだ優子に抱えられており、そのピンクは優子のヘアバンドと似ている。
かわいいものは優子にふさわしい。
他の友達はいつもこう言っている。
私はかばんを公園のベンチから持ち上げようとし、またあの音がした。
パキッ。
戸惑いながら、自分の手を見た。
手は普段と同じ。痛くもないけど、なんか変。
右手の手首は前より動きにくくなった気がする。右手を降ろし、今度は左手でかばんを持ち上げる。
かばんはそんなに重くない。中に2冊の教科書とペンケースだけ入っている。
また、パキッて、手首から僅かな音がした。
両手を開き、握る。何回も繰り返しを手を動いてみて、音がしなかった。
また気のせい?
かばんを肩に掛け、家に向かって歩き始めた。
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