死がふたりを分かつまで

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 病院のベッドに寝たきりの生活が続き、今日も呼吸は苦しい。  私は年老いて肺を患っていた。  相変わらず会話は無く、ベッドの横にあるパイプ椅子に腰掛けた彼は、無言でスマホをいじっている。 「……ごめん」  青年の姿のままの彼は唐突にそう呟いた。 「え……?」  驚いて彼を見ると、スマホから視線を外した、ずっと変わらない瞳と目が合った。 「ごめん……病気になんかなって。変な薬のせいで君と一緒に歳を取れなくなって……上手く、愛してあげられなくて……本当にごめん」  伏せた彼の目は哀しそうだった。  ……どうして? 私には興味が無くなったはずなのに……。 「なんで……私のこと、どうでも良かったんじゃなかったの?」 「そんなわけない! 愛してたよ。いや、今もずっと……愛してる」  彼の本心を初めて聞いたような気がした。 「じゃあ、今まで話さなかったのは?」 「君だけが年老いていくのを見るのが苦しかったし、怖かった……だから、逃げてた。ごめん」 「なんだ……だったらもっと……違う人生が、歩めたかもしれないね……私こそごめんなさい」  彼は力強く、けれど優しく私の手を握った。 「大丈夫だよ、死ぬまでずっと、愛してる」 「えぇ、私も……愛してる」  今ここで、永遠の愛を誓おう……死がふたりを分かつまで。 [完]
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