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発表された新薬はいち早く彼に届けられ、彼は運良く病気の治療に成功した。
余命はあと僅かだったが、その状態からの奇跡的な回復に、医者やメディアはこぞって彼の話を聞きたがった。
しかし、そんな新薬も完璧ではなかった。
それが医者やメディアが彼に押し寄せたもう1つの理由だ。
新薬の副作用。それは不老不死だったのだ。
病気が治った彼はまず髪や髭、爪が全く伸びなくなった。
それから1年、2年……5年と経過してもシワはもちろんシミひとつ増えない。互いに50歳になろうとしている今でも、髪が伸びないせいか白髪の1本も見当たらないのだ。
いつまでも若い彼は、やがて職場の若い女性から人気を得るようになり、年老いていくだけの私では、きっと物足りなくなってしまったのだろう。
あんなに大きな覚悟で誓った私への愛も、今は皆無と言っていいほどにすり減ってしまったようだった。
キスをしなくなり、傍にいることも減った。会話が減り、1人になれる自分の部屋に閉じこもって過ごすことが多くなった。
そしていつしか私は、最低限の会話で彼を見送った後、彼と結婚したことを後悔するようになった。
彼から離婚の申し出はなかったし、私から別れを告げる勇気もないまま、何十年も時は経ち、若かったあの頃とは逆の死がふたりを分かつ時が近づいて来ていた。
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