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吉定が茶をすすめると、狐女は一息にごくごくと飲み干す。
「わりぃな、忙しいときに」
「まあね、とりあえず昼は終わったから良いよ…それで?」
ああ、とユキが事情を話す。なんとか姫と次郎が夫婦になるよう手伝ってほしいと言うと、狐女はひとつ案を出した。ゆきはなるほどと膝をうったが、吉定は懐疑的だ。
「そんなことでいいのか?なんかもっと…お前の化生を使ってなにかするものかと」
吉定の問いに、狐女は苦笑いする。
「うっかり化けて、祓われちゃこっちもたまんないしね。ひとまずこれでやってみてよ。だめならまた、考えるし」
「…なんか意外に義理堅いな、お前」
吉定は狐女がたのみごとに対し真面目に考えていることに驚いたが、本人は当たりまえという顔をしている。
「騙したり逃げるのが得意なら、人間の男に惚れたりしないよ。じゃ」
狐女は少し身をかがめると、竜巻を起こして去っていった。
「ほんとにそれで、うまくいくのかのう…」
吉定はいまいち信じられないまま、それでも折角考えてもらったので、とそれを次郎に伝えた。次郎は素直に聞きすぐさま実行したらしく、数日後には嬉しそうに吉定たちのもとへやってきたのだった。
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