ユキと吉定のはなし(3)

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「やはりようわからん。まあ、なるようになるやろ」 「えー。陰陽師のくせに適当だな」 「一介の陰陽師なんぞ、ちっぽけな存在よ。さ、俺は寝る。朝になったら起こしてくれ」 吉定はそう言い、部屋の隅に祀られている木札を指した。 「ユキも寝たらどうや。戦で俺の周りをずっと飛び回ってて、疲弊してるやろ」 「うーん、まだそんな疲れてるわけじゃねえけど……」 さっさと寝床にもぐった吉定をちらと見て、肩をすくめてユキは夜空に飛び上がった。そのまま屋根に座り霞みがかった月を眺めていると、馴染みの野良猫がやってきて隣に座る。 「よしよし」 ユキが猫を優しくなでてやると、猫は喉を鳴らした。 「ゆき(・・)」 ユキはひとりごちた。 「お前の師匠は、人が好すぎるよなあ……」 その言葉には誰からも返事がないが、代わりに、流星が落ちていく。 「今年は流星が多いな……」 今度は猫が、にゃあ、と相づちを打った。夜空を流れる幾筋もの光は、ふわっと現れ、すっと消えていく。 少し経ってから、ユキは部屋へ戻り、自分の本体である木札のうえに降り立つ。追いかけて来た猫に挨拶をすると、姿を消した。 猫もひとこえ鳴くと、闇の中、庭を抜けてどこかへ去っていく。屋敷は、そのまま静寂に包まれていった。
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