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「寂しいって気持ちは、残された人の後悔から生まれるんや。私はあの人といるとき、次は会えへんかもなあと思いながら過ごしてたから、普通の人よりは気丈に見えるんやろな」
それでも、と加津は苦笑して続ける。
「寂しいもんは、寂しい……」
草太も頷く。その横顔は母親に似ているが、きりりとした目元は父親を思い起こさせた
「……あ」
ユキは吉定の言葉を思いだし、加津と草太に伝える。5、6百年ものちに子孫の体を借りて生まれ変わるという話を聞き、最初は驚いた二人だったが、草太は空を見て一呼吸おいてうなずいた。
「本当か嘘か……けれども、それが父上の読みであれ、願いであれ、信じない理由は私にはない」
加津も同意する。
「うちらは勿論あと何百年なんて生きるわけはない…あの人の気持ちは、ユキだけに背負わせてしまうわけやけど……」
強要したくないという、加津たちの気持ちを読みとったユキは、からからと笑った。
「背負うって……んな大袈裟なこと言うなよ。俺は、篠目家の式神なんだ。血筋が途絶えない限りは、嫌がられても憑いていくけどな?」
「そう……か」
草太は笑った。ああ、とユキは答え、自分のからだを見た。
「言ったろ?せっかく吉定とゆきからこの姿をもらったんだ。これからも二人分働くからよ、よろしくな」
加津も草太も、笑顔で頷いた。
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