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せつは檀家の娘で、法事の手伝いをしていた草太に惚れて、人を介して縁組みをしてもらった。草太も働き者のせつに最初から好印象を抱いていたが、何分陰陽師ということをどう伝えるか悩んでいた。
結局、意を決して打ち明けたところ、「陰陽師と言っても、別に普通の人と何も変わらないでしょう」とあっさり言われて簡単な祝言を挙げたわけだが、草太が自ら祝詞を上げて晴れて夫婦となった瞬間、せつの眼前に現れたのは、ユキだった。
せつはまず、たいそうな美少年に驚き、つぎにその額に生えた角に驚き、せつがユキを見えることに驚く草太に驚いた。「篠目家のものにしかユキは見えんから、せつは式神にも認められた篠目家の一員っていうことやな」とは、加津の言葉である。
だがそれから寅吉がうまれ、こちらはおぼろげに物が見える頃にはユキの姿を見て笑うようになり、一同驚きつつも感心し、ユキと篠目家の関係に納得したのであった。
そんな経緯で、寅吉にとっては式神のユキがいることは至極当たりまえなのだが、他の人には見えない旨を理解させるにはなかなか苦労した、というのは余談である。
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