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「ユキちゃん、お酒飲めたっけ?」
「いや。飲むっていうか、供えられたら吸収はするかもしれねえけど」
「じゃあ、どうするの?」
ははは、とユキは笑う。
「ふりでもいいんだ。平和な時代でのんびり過ごす…ただそれだけをやってみたいかなあ、と思ってさ。そのあとはまあ、なるようにしかならねーんじゃねえの?」
聡子も笑った。
「その、鷹揚なところはユキちゃんらしいわねえ」
「そうか?昔から言われるんだけど、これはゆきの性格らしいぞ」
ううん、と聡子は首をふる。
「私たちは、今こうして喋ってるユキちゃんしか知らないもの。あーあ……」
聡子は息子に手を伸ばした。
「なんにも知らないで無邪気に笑ってるわ、この子。でもほんと地味顔ね…これでちゃんと結婚できるのかしら……」
「圭介は地味顔でもモテてたぞ」
「そこは不思議なのよねえ、でもこの子は全体的にのんびりしてるし、寝起きも悪いし」
「篠目家の男子は一代おきに、必ず寝起きの悪いのが生まれてるからなあ…大人になっても直んねーぞ、これ。そう言えばじいさんの母親も、だいぶ苦労してたなあ…軍隊で寝坊したらどうしようって」
ため息をつく母親と、苦笑するユキを交互にみながら、靖成は笑う。
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