My Sweet Teddy bear

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「ハルカ、どうしたんだ? すぐ帰ってくるようなコト、言ってたじゃんか」  まるで当然のように助手席に乗った俺を、レンもまた当然のようにマンションに連れ帰り、簡単な夕食をとった。 「ハルカの家って、商店だろ? 割りと大きな店だけど、仕切ってるのはハルカの両親だから、やっぱりどっちかいないと不味いんだってさ。だから、結局使い走りにハルカがいないと困るんだって。そんで、どっちにしても女手がないと困るからって親戚の叔母さんに電話をしたら、そっちもなんか都合が悪くてダメなんだって。で、どうしても抜けられないとか、なんとか言ってた」 「そんで、シノさんは放り出されたってワケか」 「別に。もう、どうでも良いよ、そんな話。それとも、俺が来ると迷惑かよ?」 「そんなコトないって。昨日の夜の約束、忘れたのかよ?」 「約束?」  テーブルの上に皿を置くと、レンは俺の顎に手を掛けて自分の方へ向かせる。 「俺のトコに来てって、言ったろ? シノさんだって、言ってくれたじゃんか。ハルカよりずっとイイってさ。約束してくれたろ? 俺のモノになるって」  親指が、ツウッと俺の唇をなぞる。  そういえばそんな事を、アレの最中に言われたっけ。 「俺は別に、誰のモンでもねェ。俺は俺のモンだ」 「つれねェの。…まぁ、そんなこったろうと思ったケド。ハルカが帰って来れない間に、絶対俺の方がイイって言わせるよ。素面の時にね」 「なにそれ?」 「出遅れた俺の、ささやかな逆襲ってヤツ。だってあの頃、ハルカには余裕があったけど、俺はキュウキュウ言ってたじゃん? 今なら対等だモンね。取り返してやろうって、必死なんだぜ?」  レンの言葉に、俺は「ふうん」と気のない返事をした。  実を言えば、俺はその事をずいぶん以前から知っていたから、今更驚くような事じゃなかったからだ。  でも、レンが声をかけてこなかったのは、単に俺がハルカと同居をしていた所為だと思っていたから、それだけは少し意外だったけれど。  でもハルカは、レンの気持ちを俺よりもちゃんと見抜いていたのかもしれない。  俺が同居を許諾した後、ハルカは俺とそういう関係になった事を、吹聴しているみたいなところがあった。  今にしてみると、ハルカはレンを牽制する為にそうしていたように思える。  俺にとっては、相手がレンだろうがハルカだろうが、どっちだって関係ない。  俺の安眠を保証してくれるなら、別にどっちでも構わないって事、ハルカは判っているから。  …でも。  それならハルカは、今俺がこうしている事、予想できるんじゃないだろうか?  あの賢いハルカなら、察しをつける事などたやすい筈だ。  それならば何故、帰ってこないのだろう?  確かに、昼間きちんと連絡は来たけれど、そんなモノなんの役にも立たない事は明白だ。  もしかして、ハルカは俺に飽きてきたのかもしれない。  ぼんやりとそんな事を考えて…。  改めて「そういう事も、あるかもしれないな」等と、簡単に思ったけれど。  そう思った瞬間、奇妙な『痛み』のような、言葉に表しがたい感覚がふとよぎった。
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