sub Rosa

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 先日、祖母が亡くなった。二度の大戦を経験しての大往生。棺の中の祖母は微笑みを浮かべているように見えた。その祖母が亡くなるほんの数日前に話してくれた秘密を、忘れない内に書き記そうと思う。 *  おじいさんとは家が近所でねぇ、私の家とあの人の家では身分は違ったけど他に子供も居なかったからよく遊んだものさ。あの人は私より十ばかり年上で、今思えば子供の我が儘で振り回してばっかりだった。  そのおじいさんがね、戦争に行くことになったのさ。最初の大戦。あの人は飛行士になることになった。何も日本みたいに特攻とかじゃなくて、郵便物を運ぶ仕事でね。それでもお国の役に立てるって張り切ってた。私はね、それを近所の人の噂話で知ったんだよ。あの人は私にそんなこと、一言も言いやしなかった。そりゃ私は子供だし、あの人の為に出来ることなんざ何もなかったかもしれない。だけどさ、居なくなったらその内忘れるだろう、と思われていたのに腹が立ってね、私は手紙を書いたのさ。「今夜、秘密の場所で待つ」って、覚えたての字で精一杯、時間を掛けて丁寧にね。
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