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伝わらない想い
ピリピリと空気を震わせながら、廊下をズンズンと歩いていく。
自分の教室に入りカバンの置いてある机まで行くと
「くそっ!!」
と怒りを拳に込めて机を殴る。
残っていた数人のクラスメイトが動きを止めて俺に注目した。
「お、おい、優希、どうした?」
一番近くに居た男が恐る恐る聞いてきた。
「何でもない。悪かった」
短く言うと、カバンを掴み教室を出る。
拳の痛みで少し冷静になれた。
歩きながら窓の外を見ると陸上部が走っていた。
一年前は俺もあそこに居た。
練習中に怪我をし、走るのをやめた。
無気力になっていた時に出会ったのが、先程大喧嘩をした湊だった。
思った事を口にし、屈託のない笑顔。
楽しい事しか興味が無く、俺のヤサグレた感情をちっぽけな物に感じさせ、いつの間にか隣に居るのが当たり前になっていた。
だけど、いつからか、あいつは変わって行った。
何となく俺がクラスの女子に告白されてから変わって行った気がする。
楽しい事が快楽に変わって行き、日々違う男と一緒に居た。
あいつが男好きだとは知らなかった。
知っても気持ち悪いとは思わなかった。
俺にとって、湊は湊だ。
たが、俺に男を求める湊には嫌悪する。
そんな事で求められても俺は応えられない。
俺が湊を見る様に、湊にも俺を見て欲しい。
その上で俺を求めろよ……!!
ギリッと唇を噛み締め
「バカヤロウ……」
数分前と同じ様な振り絞った声で呟いた……。
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