9人が本棚に入れています
本棚に追加
葵は、昼休みになると大急ぎで職場を出て、重人と会うために使っている、会社から少し離れた馴染みのカフェへ足を延ばした。でも時間はあまりないから、長居はできない。
通りに面した賑やかな店の中に入ると、一番奥のいつものテーブルで重人が待っているのが見えた。
「もう、忙しいのに」
そうこぼして、席に腰を下ろそうとしたときだった。
衝立で見えなかったが、重人の向かいのこちら側の席に、何故か、あの上野沙耶が座っている。ノートパソコンを開いた状態で、日替わりランチを食べ始めたところのようだった。
いくら忙しいとはいえ、今年は入ったばかりの新入社員に、昼休みまで仕事をさせるのはまずい。ひとこと、重人に注意しなくては。――
目の前の光景に違和感を覚えつつも、葵は沙耶の隣の席に着いた。
最初のコメントを投稿しよう!